派遣社員の教育訓練とは?労働者派遣法に基づき、注意点も含めて解説します!
派遣社員の教育訓練とは、派遣社員に対して行うべき教育や訓練を指します。
教育訓練は派遣社員のスキルアップやキャリア形成を目的としています。
2015年9月には派遣元企業に、2020年4月には派遣先企業において教育訓練が義務付けられました。
この記事では、労働者派遣法に基づく教育訓練義務化の概要、教育訓練の目的、法改正の内容、そして派遣元と派遣先が行うべき具体的な対応策について解説します。
目次[非表示]
- 1.派遣社員の教育訓練とは?
- 1.1.派遣社員の教育訓練の目的
- 1.1.1.派遣社員のスキル向上とキャリアアップ
- 1.1.2.派遣先での均等・均衡待遇の確保
- 2.派遣元企業が行うべきキャリアアップ措置とは
- 2.1.教育訓練計画の必要要件
- 2.2.教育訓練の時期・頻度・時間数などの要件
- 2.3.教育訓練計画以外のキャリア形成制度に関する措置
- 2.4.キャリアコンサルティングの相談窓口の設置
- 2.4.1.キャリア形成を念頭に置いた派遣先の提供
- 2.5.派遣元企業におけるキャリアアップ措置に関する注意点
- 2.5.1.教育訓練計画に関する注意点
- 2.5.2.キャリアコンサルティングの相談窓口の設置義務の注意点
- 3.派遣先企業が行うべき教育訓練に関する措置とは
- 3.1.派遣先企業での教育訓練とは
- 3.1.1.訓練費用について
- 3.1.2.派遣元企業への情報提供
- 3.1.3.正社員の募集状況の提供義務
- 4.教育訓練計画の作成の流れ
- 4.1.ステップ1:現状の把握や分析
- 4.2.ステップ2:派遣社員の目標・目的の明確化
- 4.3.ステップ3:教育訓練計画の策定
- 4.3.1.訓練内容について
- 5.教育訓練の形式と選び方
- 5.1.OJT
- 5.2.集合研修
- 5.3.eラーニング
- 5.4.教育訓練にeラーニングを活用する際はイー・コミュニケーションズのSAKU-SAKUTestingをおすすめします
- 6.まとめ
派遣社員の教育訓練とは?
教育訓練(キャリア形成支援制度)とは、派遣社員のキャリアアップのための制度です。
労働者派遣法では、2015年には派遣元企業において、派遣社員が段階的かつ体系的に業務に必要なスキルを習得できる教育訓練が義務化されました。
また、2020年には、派遣先企業が派遣元企業に対して適切な教育訓練や待遇改善のために協力することが義務化されました。
ここでは派遣社員の教育訓練について詳しく解説します。
派遣社員の教育訓練の目的
派遣社員の教育訓練の主な目的は、「派遣社員のスキル向上とキャリアアップ」「派遣先での均等・均衡待遇の確保」です。
それぞれ簡単に解説します。
派遣社員のスキル向上とキャリアアップ
教育訓練を受けることで、スキル向上を図ることはもちろん、新しい知識や技術を習得することで、自身の市場価値が高まり、長期的なキャリアアップが期待できます。
派遣先での均等・均衡待遇の確保
同一労働同一賃金の実現に向け、2020年4月から派遣社員の不合理な待遇差をなくすため、労働者派遣法の改正がありました。
派遣先企業は給与や福利厚生等について正社員との差別をなくすための配慮をすることが義務化されたことに加えて、正社員に対して業務遂行に必要な能力を付与するための教育訓練がある場合、派遣元企業から教育訓練を依頼された時は、派遣社員に対しても同様の教育訓練を実施することが義務化されました。
教育訓練(キャリア形成支援制度)はこれらの目的をもって定められました。
派遣元企業が行うべきキャリアアップ措置とは
次に派遣元企業が行うべきキャリアアップのための措置について詳しく解説します。
派遣元企業は派遣社員のキャリアアップのために教育訓練計画を策定しなければなりません。
教育訓練計画をたてる際の要件や派遣元企業が教育訓練で注意しなければならない事項を説明します。
教育訓練計画の必要要件
教育訓練はただ必要そうなスキルをピックアップして派遣社員に受けてもらうのではなく、教育訓練計画という計画を立てなくてはなりません。
この計画はキャリアアップを念頭に置いた段階的かつ体系的なものである必要があり、いくつかの要件を満たすものでなければなりません。
要件は以下の通りです。
①教育訓練は雇用するすべての派遣社員が対象
②教育訓練は有給かつ無償で行われること
③教育訓練は派遣社員のキャリアアップに資する内容であること
キャリアアップに資する内容とは、派遣社員それぞれ目標や目的が異なるため、キャリア形成に対する考え方が違います。キャリアアップに資するとは、派遣社員それぞれの目標や目的を達成できる計画をたてる必要があります。
④教育訓練は入社時の教育訓練も含む
入社時の教育訓練は必須です。少なくとも最初の3年間は毎年1回実施する必要があります。
⑤無期雇用の派遣社員には、長期的なキャリア形成を考えた内容であること
また、すでに派遣社員、無期雇用派遣として雇用されている場合でも、教育訓練計画を作成する必要があります。その場合には、すでに雇用されている派遣社員に対する教育訓練計画だけでなく、今後、新しく派遣社員を雇い入れた場合に対応できるような、教育訓練計画を作成する必要があります。
教育訓練の時期・頻度・時間数などの要件
教育訓練には時期・頻度・時間数などの要件も満たす必要があります。
前項で紹介した「④教育訓練は入社時の教育訓練も含む」の記載の通り、入社時は必ず教育訓練を実施しなくてはなりません。他にも以下のような対応が必要です。
・4年目以降はキャリアの節目など、一定期間ごとにキャリアパスに合わせた教育訓練を用意すること
・フルタイムで1年以上の雇用が見込まれる派遣社員に対して毎年概ね8時間以上の教育訓練の機会を提供すること
・教育訓練を適切に実施できるように、就業時間等の配慮をすること
教育訓練計画以外のキャリア形成制度に関する措置
教育訓練計画以外に「キャリア形成支援制度」でやらなければならない措置があります。
・キャリアコンサルティングの相談窓口の設置
・キャリア形成を念頭に置いた派遣先の提供
キャリアコンサルティングの相談窓口の設置
この相談窓口には、以下の要件を満たす必要があります。
・キャリアコンサルティングの専門知識をもっている者が配置されること
・雇用されているすべての派遣社員が利用でき、希望すればキャリアコンサルティングを受けられること
キャリア形成を念頭に置いた派遣先の提供
「キャリア形成を念頭に置いた派遣先の提供」とは、派遣社員のキャリアを念頭に置いた派遣先を提供するための事務に関する手引きや、マニュアルが整備されている必要があります。
参考:キャリアアップに資する教育訓練計画の策定について(厚生労働省)
派遣元企業におけるキャリアアップ措置に関する注意点
「教育訓練計画」「キャリアコンサルティングの相談窓口の設置」の義務についていくつかの注意点があります。
それぞれの注意点を解説します。
教育訓練計画に関する注意点
派遣社員との労働契約締結時までに、派遣社員に対して教育訓練計画の明示や周知をしましょう。
そして、教育訓練計画に関する情報についてはインターネットやその他の方法でわかるようにしましょう。
また、教育訓練を受ける際にかかる費用については、派遣先企業との間の交通費よりも高くなる場合は派遣元企業が負担すべきものとされています。
キャリアコンサルティングの相談窓口の設置義務の注意点
キャリアコンサルティングは希望によって行い、希望しているのにも関わらず実施しないことは認められません。
参考:派遣元事業主の講ずべき措置は・・・(厚生労働省)
派遣先企業が行うべき教育訓練に関する措置とは
2020年4月の労働者派遣法の法改正から、派遣社員の平等な待遇を確保するための措置として派遣先企業での教育訓練が義務化されました。
ここでは派遣先企業が行うべき教育訓練に関する説明をしたいと思います。
派遣先企業での教育訓練とは
派遣先企業での教育訓練に関する注意点がいくつかあるので、ご紹介します。
訓練費用について
段階的かつ体系的な教育訓練は、必ず有給・無償のものでなければなりません。 また、その費用を派遣社員の給料の削減等によって補うことはしてはいけません。
派遣元企業への情報提供
派遣元企業の求めに応じて、派遣社員のキャリアアップに資するよう、業務遂行状況や業務遂行能力の向上度合、教育訓練に関する内容などの情報を提供する
正社員の募集状況の提供義務
派遣先企業は、以下の条件を満たす場合、派遣社員に対して正社員の募集情報を知らせる義務があります。
・派遣先の同じ事業所で1年以上継続して受け入れており、その事業所で正社員を募集する場合
情報の提供方法としては、事業所内への掲示だけでなく、派遣元事業主を通じて知らせることも可能です。
ただし、全国転勤を伴う総合職など、派遣労働者が応募資格をもたない募集情報を周知する必要はありません。
参考:平成27年労働者派遣法改正法の概要(厚生労働省)
このように派遣元企業だけでなく、派遣先企業も法改正によって義務化になったことがあるため、注意が必要です。
教育訓練計画の作成の流れ
ここでは、段階的かつ体系的な教育訓練計画の作成の流れを解説します。
ステップ1:現状の把握や分析
まず、派遣社員一人ひとりの現状把握や分析をする必要があります。その際に派遣社員のスキルや課題、派遣社員自身のキャリアに関する考えを把握・分析し、整理することが大切です。
ステップ2:派遣社員の目標・目的の明確化
現状を把握・分析することで、「求められる人物像」や「身に着けるべきスキル」など目標や目的を明確にできます。
仕事の種類別や勤続年数、職位別に目標や目的を細かく考えることで、段階的かつ体系的な教育訓練計画につながりやすくなります。
ステップ3:教育訓練計画の策定
「求められる人物像」や「身につけるべきスキル」を明確化することによって「この目標や目的を達成するためにはどんな教育訓練を行うべきか」を念頭に置き、実際に行う訓練内容・順序・時間・評価等の進め方を明確にしていきます。
訓練内容について
目的に応じて、様々な訓練内容がありますが、段階的かつ体系的な訓練は「階層別訓練」と「職能別訓練」を組み合わせることをおすすめします。
・階層別訓練とは
職種に関係なく、勤続年数などで区分された各階層の社員を対象に、必要な能力を向上させるための訓練です。
・職能別訓練とは
部門ごとの職種に応じて行われる教育訓練のことです。各部門での職務を遂行するために必要なスキルを身につけるための訓練です。
参考:キャリアアップに資する教育訓練計画の策定について(厚生労働省)
教育訓練の形式と選び方
派遣社員の教育訓練の形式は様々ですが、主な形式は以下の3つです。
- OJT
- 集合研修
- eラーニング
教育訓練の形式は多様で、それぞれにメリットとデメリットがあります。
派遣社員のスキルレベルや業務内容に応じて、最適な訓練形式を選択することが重要です。
ここでは、各訓練形式の特徴やメリット・デメリットについて説明します。
OJT
OJT「On-the-Job Training(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)」とは、職場で実際の業務を通じて行われる教育訓練のことです。
メリットとしては、実務を通じて即戦力としてのスキルを身につけることができる点や、経験豊富な社員から直接指導を受けられるため、改善点をすぐに直せる点などが挙げられます。
デメリットとしては、指導する側の負担が増えることや、指導者のスキルに依存するため教育の質にばらつきが生じる可能性があります。
また、忙しい職場では計画的な訓練が難しい場合があったり、実践に重点を置くため、理論や基礎的な知識が不足する可能性があります。
集合研修
集合研修とは、特定の場所に社員を集めて、一斉に講師が講義をする教育訓練のことです。
メリットとしては、専門の講師から専門的な知識を得ることができる点や、また、カリキュラムに質疑応答の機会があれば受講者の疑問をすぐに解決できる点などがあげられます。
また、他の社員とコミュニケーションを取る機会もあるため、人脈を広げることもできます。
デメリットとしては、開催場所や日時が固定されるため、業務のスケジュール調整が必要になることや、全員が一斉に同じ内容を学ぶため、業務を一旦停止しなければならない点が挙げられます。
また、外部の講師を呼ぶ場合にコストがかかること、会場の手配等で担当者の手間がかかってしまうこともあります。
eラーニング
eラーニングとは、インターネットを利用してオンラインで行う教育訓練のことです。
メリットとしては、インターネットの接続さえあれば、場所や時間に縛られず自分のペースで学習でき、忙しい人や、働きながら学ぶことに適しています。
また、コスト効率も良く、教材の印刷や講師の派遣が不要で、多くの受講者に対して一度に教育を提供できるため、コストを削減できます。
デメリットは、自己管理が求められるためモチベーションを維持するのが難しい場合があります。
また、講師のサポートが制限され、直接対面での指導や質問ができず講師のサポートが限定的になることがあります。
さらに、必要なIT環境が整っていない場合や、実務を伴う訓練には不向きな側面もあります。
eラーニングは、多くの利便性と効率性を提供する一方で、自己管理や技術的な課題も伴います。効果的に利用するためには、学習者自身の積極的な姿勢や環境の整備が重要です。
教育訓練にeラーニングを活用する際はイー・コミュニケーションズのSAKU-SAKUTestingをおすすめします
イー・コミュニケーションズは、研修のeラーニングサービス、試験のCBTサービスなど、検定団体や企業の検定試験や研修、通信教育に関する20年以上のシステム運用実績を有しています。
eラーニングシステムの提供はもちろん、運用支援や他システムとの連携など、お客様のニーズに合ったサービスをご提案できます。
オンラインのeラーニング研修を実施するなら、累計1,500社、月20万IDが利用するeラーニングプラットフォームSAKU-SAKU Testingがおすすめです。スマートフォン、タブレット、PCのマルチデバイスから利用でき、動画やスライド教材など幅広い出題形式に対応しています。
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「マニュアル不要で誰でも操作ができる」をコンセプトに開発されたため、導入後の担当者の負荷が少なく、効率的な運用が可能です。
ご興味がおありの場合は、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
派遣社員の教育訓練は、派遣社員のスキルアップやキャリア支援によって正社員と派遣社員の待遇差をなくすための措置です。
派遣元企業だけでなく、派遣社員を受け入れる企業にも法的義務があり、守る必要があります。
このような措置は派遣社員のモチベーション向上や業務効率の向上に寄与します。