人材マネジメントとは?フレームワーク構築の手順とポイント
人材マネジメントは企業活動にとって大きなプラスとなる人事上の施策です。しかし実際に行おうと思っても、具体的な方法がよくわからないのではないでしょうか。とくにフレームワークを活用するとはよく聞く話ですが、調べてみてもよくわからず導入できずにいるケースも多いことでしょう。
この記事では人材マネジメントについて、マネジメントを行うための枠組みとしてのフレームワーク作りと、フレームワーク作りに活用できる分析方法について整理してまとめます。ぜひ参考にしてみてください。
目次[非表示]
人材マネジメントとは
「人材マネジメント」とは、企業活動において最大限の成果を得るために人材を適切・有効に活用することを言います。在籍している社員が実力を発揮できるように、また社員の実力を高められるようにさまざまな施策を行い、人事的な面から会社の利益を最大化します。人材マネジメントは採用から退職までの間のあらゆる局面で、あらゆる点を吟味して行うものです。
なお似ている言葉に「人材管理」がありますが、ほぼ同じ意味で使われます。「管理」というと「統制する・コントロールする」というイメージがあるかもしれませんが、「人材管理」の「管理」は「マネジメント」に共通する「適切に管理する」というニュアンスで使われています。
人材マネジメントの要素
人材マネジメントの要素をまとめます。ここで言う「要素」とは、人材マネジメントの考え方が反映される業務のこととお考えください。以下の6つの要素があります。
採用
育成
評価
処遇
配置
休職・退職
1つずつ見ていきましょう。
➀採用
まず初めは人材の入口となる採用です。
採用に際しては、あらかじめ現在在籍している社員のスキルなどを把握しておき、戦略と比較して不足している人材像を明確にしておきます。そうして明確になった求める人物像をもとに募集し、条件に合致する人を採用します。
必要ながら不足しているスキルを持つ人材を採用によって補います。
②育成
人材を採用したら、次は育成です。もちろん以前から在籍している社員も育成の対象です。
戦略と比較して、戦略を行うのに不足しているスキルを獲得するような教育を行います。教育の方法にはいろいろあります。OJT・研修・eラーニングなどが代表的です。自社に合った形で教育しましょう。
人材マネジメントと成果の最大化のためには、内部の人材の発掘と有効活用が重要です。基本的なスキルは全社員に教育しますが、専門的なスキルやリーダーシップなどは対象を選んで教育するのが一般的です。対象となる適任者を見つけるには、内部の人材の経歴やスキルを把握しておく必要があります。
③評価
次に社員の評価です。
業績や仕事ぶりに応じた適正な評価を行います。業績や成績の評価が一般的ですが、精度を高めるために能力や意欲なども加えて多角的に評価しましょう。評価にはさまざまな手法があります。MBO評価が主流となっていますが、近年はコンピテンシー評価・360度評価を導入する企業が増えているようです。
適切な評価を行うことは採用のしやすさや社員の定着・モチベーションなどにかかわり、人材マネジメント上でも重要なポイントとなります。
④処遇
評価を行ったら、その結果に応じた処遇を決定・実施します。具体的には給与・賞与・ポジションなどに評価結果を反映させます。処遇には基準が必要です。どのような評価に対してどのような処遇を行うのかルールを策定し、社員にも公開しましょう。
処遇は評価以上に、社員の確保・定着やモチベーション・エンゲージメントに直接的かつ強く影響します。高い業績を残したのに処遇が変わらなければ、離職につながる可能性も出てきます。適切で透明性の高い処遇を行いましょう。
⑤配置
適材適所の配置は企業の成果の向上において大変重要です。
スキルや経歴・経験に基づいて、能力を発揮できる部署に人材を配置します。配置してからも、定期的に見直しを行ってミスマッチを減らしましょう。スキルのミスマッチだけでなく、社員本人の希望のミスマッチを減らす努力も必要です。
配置も社員のモチベーションやパフォーマンスに影響します。さらに現在では働き方の多様性も求められるようになっており、配置は注意して決める必要があります。
⑥休職・退職
休職や退職も人材マネジメントの1つの要素です。出産・育児など、社員のライフステージの変化に応じた対応を行います。
休職している間の人材確保や配置、復職時の対応が求められます。そのほか、退職する場合の対応も含まれます。休職・退職のルール作りや適切な運用は、コンプライアンスにかかわる繊細な問題です。慎重に行いましょう。
人材マネジメントのフレームワーク
人材マネジメントを行うには、枠組みとなるフレームワークを構築する必要があります。人材マネジメントは経営戦略に基づいて行うため、企業によって具体的なフレームワークの内容は異なります。自社に適したフレームワーク作りが求められます。
ここで「フレームワーク」という語の確認をしておきましょう。人材マネジメントでは2種類の「フレームワーク」が曖昧に使われている傾向があります。
まず、人材マネジメントを行う仕組み・枠組みとしての「フレームワーク」です。今述べているのはこの意味のフレームワークです。アレンジして使うための仕組みの定型やアレンジ前の原型を指していることもあります。
もう1つ、仕組みを作る際の考え方・分析方法を「フレームワーク」と呼んでいることもあります。こちらの意味でのフレームワークは後ほどまとめます。
フレームワーク構築の目的
マネジメントの枠組みとしてのフレームワーク構築には、次のような目的があります。
効率的かつ一定水準をキープした運用
マネジメントにかかわる担当者の基準として均質化・ブレの防止
フレームワークは仕組みであり基準とも言えます。そのためフレームワークに則ったマネジメントを行えば、効率的かつ一定の水準をキープした運用が可能になります。また内容・品質について言えば、フレームワークを使用することで経営戦略を実行することにもなります。フレームワークは経営戦略に基づいて設定するものだからです。
さらに基準としての側面も持つため、担当者によるマネジメント業務の均質化・ブレの防止にも役立ちます。
フレームワーク構築のポイント
フレームワークを構築する際のポイントをまとめます。
まず、自社の経営戦略を具体的な施策にまで反映させ、整合性のある仕組みを作ることが挙げられます。経営戦略を机上の空論で終わらせずに、企業活動の原動力とするためには施策に落とし込むことが大切です。
次に、個々の社員が自発的に決定する部分を作ります。目標設定や学習内容などが挙げられます。先に述べた経営戦略は社員の自発性とは無縁なのですが、トップダウンの内容ばかりでは社員が自分のものと感じることができなくなってしまいます。
また、フレームワークにこだわりすぎることから生まれる硬直化を防ぐため、時代や状況の変化に臨機応変に対応することも大切です。これは構築というよりも運用のポイントですが、フレームワークについてもPDCAを行うことが効果を高めます。
これらのポイントを守ることにより、より機能しやすいフレームワークを構築・運用することができるようになります。
活用できるフレームワークの具体例
次に、「仕組み作りのための分析方法」という意味でのフレームワークを紹介します。ここまでまとめてきた「マネジメントの仕組み」ではなく、その仕組みを作るのに役立つ分析手法としてのフレームワークです。
以下の4つについてまとめます。
- ロジックツリー
- SWOT分析
- TOWS分析
- PPM分析
1つずつ見ていきましょう。
➀ロジックツリー
「ロジックツリー」では、大きな問題や分析の糸口を見つけにくい問題をツリー状に小さな課題に細分化していく方法です。漠然としていた内容を体系的にまとめて把握することが可能になります。そして細分化された小さな課題を解決していくことで、全体の問題を解決します。
仕組みを構築する場面では、課題の解決方法を検討するときに活用することができます。
②SWOT分析
「SWOT分析」の「SWOT」は、「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunities)」「脅威(Threats)」の頭文字です。自社の外的要因と内的要因を、それぞれポジティブな要因・ネガティブな要因に分けて分析します。内的要因は強み/弱みに、外的要因を機会/脅威に分類されることになります。
仕組みの構築で求める人材像を検討するときに、その前提となる自社をめぐる状況を整理するのに活用することができます。
③TOWS分析
「TOWS分析」は、SWOT分析の4要素を掛け合わせて分析し、課題の対策を生み出す手法です。たとえば「強み×脅威」であれば、自社の強みによって外部の脅威に対処する戦略を検討します。「弱み×機会」なら、自社の弱みを補完して機会をつかむ戦略を考えます。
SWOT分析で状況を整理したのち、求める人材像を検討するときに活用できる手法です。
④PPM分析
「PPM」は、「Product Portfolio Management(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)」の頭文字です。市場成長率の高低×マーケットシェアの高低でマトリクスを作り、自社の事業や製品を「花形」「負け犬」「金のなる木」「問題児」の4つに分類して分析します。経営資源の最適な配分を決めるのに使われます。
仕組みの構築では、プラン策定時の方向性や人的リソースの配分を考えるときに活用可能です。
人材マネジメント構築のステップ
次に、人材マネジメントの仕組みを構築するステップをまとめます。上記の分析方法をこのステップで活用して、仕組みを構築することになります。次の3つのステップに分けて解説します。
- 経営戦略の明確化
- 現状の把握
- 経営戦略を実現するプラン作成・実行
順に見ていきましょう。
➀経営戦略の明確化
初めに、経営戦略を明確にします。人材マネジメントは、経営戦略に基づいて設定するものです。言い換えれば、人材マネジメントは人事面から経営戦略を実現する手段です。
まず経営戦略の内容を改めて確認しましょう。経営戦略は、事業の目的を達成するための大局的な方針です。いろいろな分類方法がありますが、他社との競争面で分類した場合、代表的な戦略には価格戦略・差別化戦略・集中戦略などがあります。
②現状の把握
経営戦略を確認したら、次に人材面の現状を把握します。社員のスキルや経歴、現在所属している部署などをまとめます。
タレントマネジメントや目標管理のデータなど、すでに蓄積したデータベースがあればそれを利用します。専用のサービスやシステムもあるので、それらを利用していると一括管理が可能となり現状把握もやりやすくなります。
③経営戦略を実現するプラン作成・実行
目指す姿である経営戦略と自社の現状とを理解したら、両者の間をどのように埋めていくかのプランを作成します。先にまとめた分析方法は主にこの過程で使います。
既存社員のスキルアップで解決可能な課題なら、育成に重心を置きます。既存社員では解決不可能なら求める人材を新たに採用して外部から補充します。適する社員が別の部署にいるのなら配置換えで対処します。
あるいは社員の流出が問題となっていて戦略を実現できないなら、採用などで補充するだけでなく評価や処遇を改善する必要があるでしょう。全体を俯瞰して、どのポイントで問題を解決するかを考えます。
また、プランの方針が決まったらさらに具体的に詳細を検討していきます。たとえば育成であれば、研修やeラーニングなどさまざまな方法があります。そのうちどれを選択するのかを検討します。また育成の対象・時期や期間・具体的な内容など、決めるべきポイントは多数あります。
どの点にも共通しますが、費用対効果や年間スケジュール・事業計画など多角的に考慮して細部を詰めていきましょう。
社員の能力開発ならイー・コミュニケーションズにご相談を
人材マネジメントにおいて、社員の「育成」は重要な意味を持ちます。人的資源の有効活用に直結するからです。若年人口の減少に伴い、新しい社員の補充が難しくなっています。今いる社員のスキルアップは、人材マネジメントにおいてますます重要となっていくでしょう。
社員の育成の一環にeラーニングをご検討中なら、ぜひ私どもの「SAKU-SAKU Testing」も候補としてみてください。知識の定着にテストを用いる「テストエデュケーション」で学習でき、知識習得に高い効果があります。
教育担当者様の声を反映し、誰でも簡単に直感で操作することが可能なシステムを作りました。研修を実施する側・受講者側、いずれも効率的に利用できます。
また、多彩なeラーニングコンテンツがセットになった「サクテス学びホーダイ」を活用いただければ、さまざまな対象にあわせた社内教育がすぐに実施できます。
「SAKU-SAKU Testing」にコンテンツがセットされているため、素早くWeb教育をスタートすることができます。
コンテンツには、新人社員向けのものや内定者教育向け、管理職向けなどを含む、100本を超える動画と、理解度を測定することができるビジネス問題が3,000問以上揃っております。
ぜひ社内教育に「SAKU-SAKU Testing」をご活用ください。
ご興味がおありの場合は、ぜひ、お気軽にお問い合わせください。