社内のハラスメントをなくす!効果的なハラスメント教育の実施方法
ハラスメントとは相手が嫌がることを行い、精神的・身体的苦痛を与えることを指します。職場内では、パワーハラスメント(パワハラ)やセクシュアルハラスメント(セクハラ)がよく問題になります。
以前は表に出てこなかった行為も、近年ではコンプライアンス意識の高まりなどにより表面化している傾向にあるため、あらためて社内のハラスメント教育が大切です。
そこでこの記事では、人事・総務等の教育担当向けに、社内の誰もがハラスメントの被害者・加害者にならないための社内教育の実施方法を解説します。
目次[非表示]
- 1.ハラスメント教育の必要性
- 1.1.パワハラ防止法への対応
- 1.2.ダイバーシティ経営の推進
- 1.3.働き続けられる安全な職場環境を作るため
- 2.ハラスメント教育に盛り込む内容
- 2.1.ハラスメントになる行動とは
- 2.2.事例からハラスメントを学ぶ
- 2.3.ハラスメントが起きない職場環境の作り方
- 2.4.ハラスメントを目にした・受けた場合の反応
- 3.ハラスメント教育の実施方法
- 3.1.ロールプレイングをするなら集合研修
- 3.2.全国一斉に実施したいならオンライン研修
- 3.3.効果測定を簡単に行いたいならeラーニング
- 4.ハラスメント教育にイー・コミュニケーションズのSAKU-SAKU Testing をご活用ください
ハラスメント教育の必要性
近年、職場のハラスメント教育がますます注目を集めています。
その理由として以下のような背景があります。
- パワハラ防止法への対応
- ダイバーシティ経営の推進
- 働き続けられる安全な職場環境を作るため
それぞれ詳しく説明します。
パワハラ防止法への対応
2020年6月から「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)」(通称パワハラ防止法)が施行されました(中小企業では2022年4月1日から)。
それに伴い事業主はパワーハラスメントの防止措置を講じることが義務となりました。具体的には以下のものがあげられます。
①パワハラ防止に関する方針の明確化、ガイドラインを整備し、従業員へ周知・啓発
ハラスメントの内容や、行為者・被害者への対応を明確化し、従業員へ周知・啓発し、従業員のハラスメントに関する問題意識を高めてもらうこと。
②相談窓口の設置および整備、そして従業員へ周知
ハラスメントに対する被害の声を受け止められるような窓口を社内に設置する。そしてその旨を従業員へ周知すること。
窓口担当者は、相談者の相談内容に応じて適切に対応すること。
③パワーハラスメントに関わる事実関係の調査と迅速かつ適切な対応
相談があった場合、しっかり事実関係を調査し、適切な対処措置を講じる責任がある。
④そのほか
相談者・行為者のプライバシー、個人情報の保護。相談者に対する不当な解雇や不利益を被ることがないよう、従業員へ周知・啓発すること。
ダイバーシティ経営の推進
多様な人材が活躍できる社会を目指し、経済産業省はダイバーシティ経営を推進しています。ハラスメントは多様性の阻害要因のひとつになっています。自分にはまったく悪意がなく、ハラスメントではないと思っていることが、ハラスメントとされる可能性もあるのです。
そのため、ハラスメント教育を実施することで、従業員全員が相手の立場や考えを尊重できる組織風土を作り上げることが可能です。
働き続けられる安全な職場環境を作るため
厚生労働省の調査によると、都道府県労働局と労働基準監督署等に寄せられた相談件数を相談内容別に内訳すると、ほかの相談内容は減少気味、またはほぼ横這いですが、「いじめ、嫌がらせ」に関する相談件数は増加し続けています(図参照)。
ここからもハラスメントが労働紛争のきっかけになっていることがわかります。
また、2021年のハラスメントを理由にした退職者は年間86.5万人で、会社にその退職理由を告げなかった人は7割にのぼります※。働き続けられる職場環境をつくるには、ハラスメントの防止が欠かせません。そのためには、社員教育が大切になります。
※パーソル総合研究所「職場のハラスメントについての定量調査」
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/harassment.html
ハラスメント教育に盛り込む内容
社内のハラスメント教育では、ハラスメントになる具体例などを盛り込むと良いでしょう。
以下のような内容をハラスメント教育に盛り込むのがおすすめです。
ハラスメントになる行動とは
では、具体的にハラスメントになる行動とはどのようなものが挙げられるのでしょうか。
ハラスメントになる行動をきちんと理解することが大切です。パワハラを例に考えてみましょう。
厚生労働省ではパワハラを6類型に分類し定義しています。
■厚生労働省によるパワハラの6つの分類
(1)身体的な攻撃(暴行・傷害)
(2)精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
(3)人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
(4)過大な要求
(5)過小な要求
(6)個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
出典:「ハラスメント基本情報」ハラスメントの類型と種類
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/foundation/pawahara-six-types/
過大な要求のみならず、過小な要求もパワハラになることがわかります。上記の内容を従業員にきちんと理解してもらうことが大切です。
以前はなかった概念が、時代の変化とともにハラスメントと捉えられるようになることもあります。今は、以下の表に挙げたようなものがハラスメントとされていますので、ハラスメントの種類も知っておきましょう。
■主なハラスメントの種類
ハラスメントの名称 |
定義 |
---|---|
パワーハラスメント |
|
セクシャルハラスメント |
相手に対し、性的な言動をすることで職場環境の悪化や不利益を与えられること |
リモートハラスメント |
リモートワーク中に起こるハラスメント全般のこと |
マタニティハラスメント(パタ二ティハラスメント) |
妊娠、出産を機に職場から嫌がらせ行為をされたり、不当に解雇などをされること |
ソジハラスメント |
性的指向思考に関連した、嫌がらせいじめ、暴力などをされること |
レイシャルハラスメント |
人種に関連した嫌がらせなどをされること |
また、ハラスメント教育では「自己の立場を利用し相手に精神的、肉体的な苦痛を与えることをハラスメントだとしている」などと自社のハラスメントの定義をきちんと伝えることが大切です。
事例からハラスメントを学ぶ
ハラスメントとなる事例を紹介し、グループワークで話し合ったり、自身の行動を振り返るきかっけにするのもおすすめです。
以下にニュースにもなったハラスメント事例を紹介します。
■性自任に関わるソジハラが認められた事例
XはY社に勤務する30代のトランスジェンダーの正社員。
入社当時の上司Aや同僚から「なぜ女装しているんだ」などと言われる「ソジハラ」を受けた。
Xは興味本位で体を触られたり、わいせつな話をされたりするセクハラを継続的にされた。
Xは精神的な被害を受けたとして、元上司AとY社に約550万円の損害賠償請求の訴えを提起。
・Y社:責任を認め、謝罪(東京地裁2022.9.8)
・元上司A:係争中
■懇親会でセクハラが認められた事例
東京都総務局の55歳の男性理事が、懇親会で複数の女性職員に対し不適切な言動を繰り返した。
被害女性により、発覚し、都が上記をセクハラ行為にあたるとして、停職3か月の懲戒処分とした。
ハラスメントが起きない職場環境の作り方
ハラスメントの被害者、加害者にならないためには、個人の行動を正すだけでなく、ハラスメントが起きない職場環境・労働環境の見直しを行うことが大切です。
とくに管理職や、経営層にはハラスメントが起きない職場環境の作り方について教育すると良いでしょう。具体的には、以下の内容が考えられます。
■アンケート、面談の機械を作る
従業員の性格や置かれている状況によっては対面での相談が難しい場合があり、不満などを伝える機会損失になりかねないため、アンケートや面談を活用しましょう。
管理職/経営陣などから従業員とコミュニケーションをとる機会を積極的に作ることで、パワハラの早期発見に繋がります。相談しやすい環境作りやコミュニケーションの活性化が大切です。
■業務体制の改善
企業では多様な働き方ができるよう、従業員の環境の変化に応じて、業務体制の見直しが必要です。
【環境の変化による業務体制見直しの例】
- 介護による勤務状況の柔軟な対応
- 妊娠、出産による休暇と職場復帰
- 時短勤務や時差出勤の活用による仕事とプライベートの両立
プライベートの変化で働き方が変わる際、もしくは変わったあとに紐づくハラスメントが多く存在します。働きやすい環境を整えたら、それに伴い二次的な嫌がらせが起きないよう、ハラスメント教育をする必要があります。
ハラスメントを目にした・受けた場合の反応
ハラスメントを目にした・受けた場合の対応方法を教育するのも大切です。
具体的には次のような内容を盛り込みます。
■ハラスメントを目にした場合
第三者としてハラスメントを目にした場合、3つのステップをとりましょう。
①被害者への声かけ(大丈夫?など)
②本人の意向確認/左記確認の上、対応
③上司、人事などに相談/加害者へハラスメントの可能性を伝える
■パワハラを受けた場合の場合の相談窓口(社内・社外)
パワハラ防止法(2020年6月1日施行)により、企業のパワハラ相談窓口設置が義務付けされました。
被害者にとって重要なのは、実質的、一元的に相談可能な窓口であること、初期段階で相談できる窓口であることです。
- 社内...社員(管理職や担当者)/人事労務/法務などの専門部門/健康診断などを行う産業医など/労働組合
- 社外...弁護士、社会保険労務士事務所/ハラスメント相談を代行している民間企業など
■同僚や部下から相談を受けた場合の対応方法
以下に留意しましょう
①話をすべて聞き、中立的な立場をとる
②相談者に不利益をあたえない(口外しないなど)
自身の印象、想像で自己判断するのではなくまずは相手の話を丁寧に最後までよく聞くことが大切です。
ハラスメント教育の実施方法
ハラスメント教育の実施方法にはさまざまな種類があります。
ロールプレイングができる集合研修、オンライン研修、eラーニング等・・。
これらは、企業の担当者が中心となって、自社にあったニーズに応じて選択したり、組み合わせたりすることが可能です。それぞれについて説明します。
ロールプレイングをするなら集合研修
「集合研修」では外部講師を呼んで講義を受けたり、ロールプレイング等で学習することができます。
ロールプレイングは、現実の業務に近い状況を設定し、リハーサルを行う研修方法です。
ロールプレイングによって、より実践的なスキルや知識を身につけられるほか、ハラスメントの被害者や加害者の立場に立てるため、感情を理解することができます。
ロールプレイングはハラスメントに関する、参加者の意識を高めることに有効な方法です。
一方で、コスト面や、準備・運用の労力がかかります。集合研修をする場合はeラーニング等の研修に加えて、必要な項目のみを集合研修で行うと良いでしょう。
全国一斉に実施したいならオンライン研修
「オンライン研修」は、主にリアルタイムの講義をインターネットなどで配信して、受講者がそれを視聴して学習する研修のことをいいます。オンラインでのグループワークやグループディスカッションなどを組み合わせる場合もあります。
ライブでの配信が多いため、日時を決めて行い受講者はその時間に参加する形式が一般的です。ライブ配信ではなく、録画した講義を配信することもあります。録画の場合は一定期間視聴できるようにして、受講者の都合のよいタイミングで受講できるようにすることがほとんどです。
受講場所は特にルールはありません。受講者の自宅などの場合と、会社などで集団で受講する場合があります。
一方で、各自のネットワークや機器を使用するため、事前に機器等をそろえてもらう必要があります。当日の通信トラブルで個別に対応することは難しいため、PCの操作に慣れていない受講者がいる場合は、事前にテクニカルトレーニングをしておくことがおすすめです。
効果測定を簡単に行いたいならeラーニング
eラーニング研修では、PCやタブレット、スマートフォンなどを使用しオンラインで学習できます。
eラーニングはオンライン研修とは異なり、決められた期間内であれば、好きなときに受講することができます。
研修担当者側も研修の日程や会場の調整をする必要がないので、時間と費用を削減することができるのがメリットです。
受講者用のマイページや管理者画面があるプラットフォームを使用すれば、受講者の進捗状況やテストの点数や理解度を確認することが可能です。
一方で、強制力が弱いので、受講者が適当に受講してしまう可能性があるなどのデメリットがあります。
eラーニングは忙しい役職者やリモートワーク中心の社員も自分のペースで進められるようにしたい企業におすすめです。
ハラスメント教育にイー・コミュニケーションズのSAKU-SAKU Testing をご活用ください
ハラスメントの研修にeラーニングを活用したいとお考えの企業様は、SAKU-SAKU Testingをご検討くださいませ。
SAKU-SAKU Testingは、社内教育に必要な機能が備わっているeラーニングプラットフォームです。管理者の使いやすさを追求し、直感的な操作性で簡単にコンテンツの搭載やテストの作成が可能です。また、受講者の受講状況やテスト結果をリアルタイムで管理できます。
ハラスメントの社内教育に最適なコンテンツもご用意していますので、ぜひSAKU-SAKU Testingをご活用ください。