社員教育とは?目的・方法・計画作成・カリキュラムをざっくり概説
これから労働力が減少していくことが確実となっている現在、社員教育はさまざまな点でますます重要になってきています。しかしせっかくの研修も、漠然と行っていたり慣例的に行っているだけだったりするケースも多いのではないでしょうか。
この記事では社員教育について、目的・方法・計画作成の手順・カリキュラム例など、概略をまとめます。新たに社員教育を導入する場合・見直しを図る場合にぜひ参考にしてみてください。
目次[非表示]
- 1.社員教育とは
- 2.社員教育しない会社を待ち受けるもの
- 3.社員教育の目的
- 3.1.目的➀意識の統一
- 3.2.目的②生産性の向上
- 3.3.目的③リスクの最小化
- 4.社員教育の方法
- 4.1.方法➀OJT
- 4.2.方法②集団研修
- 4.3.方法③eラーニング
- 4.4.方法④自己啓発(SD)
- 4.5.方法⑤その他
- 5.社員の教育計画作成の手順
- 5.1.手順➀現状把握と課題の発見
- 5.2.手順②教育の目標の設定
- 5.3.手順③教育のスケジュール決定
- 5.4.手順④教育の内容決定
- 5.5.手順⑤教育後のフォロー・ブラッシュアップ
- 6.社員教育のカリキュラム例
- 7.社員教育と助成金
- 8.社員教育のご相談はイー・コミュニケーションズへ
社員教育とは
「社員研修」とは、業務上必要なスキルや知識、職場環境や業績を改善・向上させるために必要な知識やスキルを身に付けさせることです。長期的に見ると大きく業績に影響する重要な施策です。計画的に行うことが求められます。
「社員教育=研修」と思われがちですが、研修以外にもさまざまな形式があります。例えば書籍の購入費を会社が負担する、資格取得を支援するなども社員教育の1つです。
入社時や昇進時などのタイミングで行うことが多くありますが、定期的に行う教育や日常的に行う教育もあります。
社員教育しない会社を待ち受けるもの
社員教育は重要な施策だと言いましたが、社員教育をしない会社はスパイラルで状況や業績が悪化していく可能性が高まります。
まず社員教育をしない会社は社員を大切にしない会社だと受け止められてしまいます。その結果、在籍していても成長できないと思われるようになり、社員が定着しなくなります。
そればかりか逆にモチベーションの低い社員が残り、結果的に意識の低い社員が集まるようになります。新しいことを学ぶ必要がないので、居心地がよいからです。
その結果モラルが低下し、知識やスキルのない社員の割合が高まっていきます。モラルやスキルのない社員ばかりでは、業務のクオリティや営業成績が下がる一方です。そうして会社としても業績が悪化していきます。事業の縮小や倒産もありうるような状況になってしまいます。
社員教育の目的
社員教育の最終的な目的は、業務をスムーズに遂行することや業績を向上させることです。より具体的には、そのために次の3つを実現することが社員教育の目的だと言えます。
・意識の統一
・生産性の向上
・リスクの最小化
1つずつ見ていきましょう。
目的➀意識の統一
社員教育には、社員の意識の統一を図るという目的があります。「意識」はいくつかの側面に分けることができます。
「企業理念」や「経営方針」を浸透させると、その会社の方針に沿った行動が取れるようになります。また「ビジネスマナー」や「コンプライアンス」など、その企業が守るべきとする常識を浸透させることも挙げられます。それによりその企業の風土が保たれます。さらに「仕事を進める手順」などを共通認識とすることで、作業手順の標準化が可能となります。
このように意識を統一させることで、行動や業務遂行のバラつきをなくすことができるようになります。
目的②生産性の向上
社員教育にはスキルや知識の習得による生産性の向上という目的もあります。
教育による生産性の向上は、個々のパフォーマンス向上(「人材開発」)とチームのパフォーマンス向上(「組織開発」)とに分けられます。
人材開発は個人の知識・スキル・意識を向上させてパフォーマンスを高めることです。それに対して組織開発は、社員同士の関係性や相互作用を対象として社員が当事者として会社をよくしていくこと・その支援を行うことです。
両面からスキルや意識を向上させることによって生産性を向上させます。
目的③リスクの最小化
コンプライアンスやリテラシー・ビジネスマナーを学んで身に付けることで、問題行動を予防することができます。リスクのある行動・行うべきではない行動が理解できるようになり、それを避けられるようになるからです。社員教育によりリスクを最小化することができるようになります。
社員が規範を守った行動ができると、社会的な信頼度も増します。業績への悪影響を防ぐ効果のほか、間接的に業績アップにもつながる可能性もあります。
社員教育の方法
次に、社員教育の方法についてまとめます。具体的には次のような方法があります。
- OJT
- 集団研修
- eラーニング
- 自己啓発(SD)
- その他
方法はかなり多くの種類があるため、代表的な方法に絞って解説します。では、1つずつ見ていきましょう。
方法➀OJT
「OJT」は業務を行いながら、マンツーマンで指導を受ける方法です。「On the Job Training」の頭文字を取った言葉です。先輩社員や上司がトレーナーとなって、教育を受ける社員(トレーニー)の指導を担当します。
業務に直結するスキルや知識・コツやノウハウも学べて戦力化しやすいというメリットがあります。しかしデメリットとして、担当者のスキルに習熟度が左右されやすい・担当者が忙しくて後回しになりがちといったことが挙げられます。
OJTを成功させるためには、担当者への教育や担当者の業務量の調節が必要です。
方法②集団研修
「集団研修」は、外部のセミナーに参加させたり社内で講義を行ったりすることを言います。対面型のほか、オンラインの「ウェビナー」も集団研修の1つだと言えます。業務を離れて行う研修「Off-JT」の代表例です。
集団研修のメリットとしては、効率よい学習が可能なこと・外部サービスなら社内にノウハウがなくても教育可能なことが挙げられます。デメリットとしては、研修中は業務から離れるので現場に影響があること・外部サービスは費用がかかることがあります。
なおOff-JTは主に講義型の研修を指しますが、グループワークやグループディスカッションなどの形もあります。
方法③eラーニング
「eラーニング」は、オンラインで文字ベースや録画動画を中心とした教材で学ぶことです。コンピューターはもちろん、スマートフォンやタブレットでも学習することができます。
教材は自社で作ることも可能ですし、汎用的な内容であればeラーニングのサービス提供者によって用意されていることも多くあります。
インターネットがつながれば場所・時間を選ばないので、自分のタイミングで学ぶことができることが最大のメリットです。逆にデメリットは通信環境がない場所ではできないことです。
方法④自己啓発(SD)
「自己啓発」は、会社が強制したり指定するのではなく、社員が自発的に内容・方法を選んで学習することです。具体的には、資格スクールやオンラインの学習、書籍による学習などがあります。社員教育として導入する場合は、企業が費用を負担します。
強制ではないので自分の興味ある内容・業務に直結する内容が選べることがメリットです。しかし逆に、強制ではないのでモチベーションを保てない場合もあります。
方法⑤その他
その他にも社員教育の方法があります。主だったものをご紹介します。
メンタリング…社員(メンティー)を、先輩社員(メンター)が支援・アドバイス
コーチング…上司が部下の目標達成を支援。指示やアドバイスは行わず、質問などによって自分で気づかせる
ジョブローテーション…ほかの部署に計画的に配置換えをすること。適性を見るために行うほか、担当業務の全体像を把握させるためにも行われる
メンタリングやコーチングは近年広く取り入れられている手法です。ジョブローテーションはとくに大手企業で導入されています。
社員の教育計画作成の手順
社員の教育計画を作る手順をまとめます。次の手順で行います。
- 現状把握と課題の発見
- 教育の目標の設定
- 教育のスケジュール決定
- 教育の内容決定
- 教育後のフォロー・ブラッシュアップ
1つずつ順に見ていきましょう。
手順➀現状把握と課題の発見
初めに、方針を決めるために現状把握と課題の発見を行います。具体的には、各部署のヒアリングを行ったり、業績や部署ごとのメンバー構成を確認します。
現状の確認により課題を洗い出します。浮かび上がった課題は、教育で改善できる課題かどうかを判断します。また課題にかかわる対象社員(属性・担当内容など)を明確化します。
手順②教育の目標の設定
課題を発見したところで、その課題を解決してどうしたいか目標を設定します。発見された課題をもとにするほか、経営方針や経営計画の内容とも連動させることが好ましいと言えます。方針や計画を具体化させることができるからです。
次で解説するスケジュールともかかわりますが、目標の難易度も確認しておきましょう。達成に時間がかかる目標なら、目標を細分化する・長期的な教育方法を考えるなどの対応も必要です。
手順③教育のスケジュール決定
目標の内容と、いつまでに目標を達成したいかをもとにスケジュールを決定します。目標達成の期限を決めることは、あいまいに終わらせないためにも重要です。
また単発で行うのか定期的に行うのかなども、ゴールとなる目標に合わせて決定します。教育を行った後のアフターフォローや習熟度の検証などもスケジュールに組み込みましょう。教育の効果や満足度を高めるためには、教育の後の対応が大きな意味を持ちます。
手順④教育の内容決定
ゴールである目標とスケジュールが決まったら、期限内の目標達成を実現できるような教育の内容を決めます。具体的には、教育の対象・方法・具体的なカリキュラムなどです。そのほか、それに伴う担当者・必要に応じて会場の確保や教材の準備・講師の手配なども決定します。
実施するのに必要な具体的な内容が決まったら、いよいよ実施です。
手順⑤教育後のフォロー・ブラッシュアップ
軽く先述した通り、教育の効果を高めるには教育後が重要です。実施の前にあらかじめ習熟度の確認方法や、理解度が低い社員へのフォローや再教育方法などの検討しておきましょう。
習熟度の確認方法の例としてはテスト、レポートなどがあります。テストで合否を決める場合は、合格の基準などを決めて事前告知もしておきます。モチベーションにつながるほか、公平感を持たせることができます。
教育を行った後は、アンケートや担当者の反省をもとに改善点がないか確認します。定期的に行う教育ならブラッシュアップしましょう。単発の教育でも記録を取っておくと後々役に立つ可能性があります。
社員教育のカリキュラム例
次に、社員教育の具体的なカリキュラム例を紹介します。階層や年次によって、必要な知識・スキルは異なります。それに伴いカリキュラムも変わります。ここでは、新入社員向け・中堅社員向け・管理職向けに分けて解説します。
カリキュラム例➀新入社員教育のカリキュラム例
新入社員教育では、ビジネスマンとしての基本を身に付けさせることが主な目的となります。
基本的なビジネスマナーや電話応対など基本的なマナーは必須です。マナーが身に付いていない社員がいると、まさに「会社の教育がなっていない」と評価されてしまいます。
そのほかコンピューターの基本操作など業務上のスキルも必要です。さらにはコンプライアンスやITリテラシーなど倫理面も近年は重要視されています。コミュニケーション力・ロジカルシンキングなどの技術や思考法の教育もよく行われています。
カリキュラム例②中堅社員教育のカリキュラム例
中堅社員は、企業においてさまざまな役割を担うため教育の範囲も幅広くなります。
上司と後輩の間を調整してつなぐ能力を身に付けること、将来に向けて自らの成長を促すこと、ステップアップした業務上のスキルを身に付けることが求められます。
具体的なカリキュラムとしては、次のような内容が挙げられます。
- OJTの技術・コーチングの方法・リーダーシップなど後輩の育成関連
- 自己分析・自己能力開発・エンゲージメントなど自己成長を促す内容
- プレゼンテーションなど実務のスキル
- コンプライアンス、ITリテラシーなど倫理面
- コミュニケーション力、ロジカルシンキングなどの技術
内容によっては、全員を対象とせず適性のある社員を選抜して行われることもあります。
カリキュラム例③管理職教育のカリキュラム例
管理職の場合、課長から上級管理職まで、階層によって学ぶべきことは異なります。係長も管理職として考えるならなおさらです。
とはいえ一般的には、意識面を変革することや、管理・部下育成などの能力を身に付けることが求められます。具体的には次のようなカリキュラムが挙げられます。
- プレイヤーからマネージャーへの意識転換(係長・課長)
- 経営層のマインドセット(上級管理職)
- マネジメント(労務・チーム・人・リスクマネジメントなど)
- 交渉力
- コンプライアンス、ITリテラシーなど倫理面
- コミュニケーション力、ロジカルシンキングなどの技術
リーダーとしての意識やマネジメント能力に関する内容が中心となります。
社員教育と助成金
直接業務に関連する知識や技術の社員教育を行う際、国の助成金を利用することができます。正社員向けには「人材開発支援助成金」、非正規社員向けには「キャリアアップ助成金」という制度が用意されています。
職種や業種は問われません。ただしビジネスマナーや間接的な知識・技術の習得は対象外となります。また外部の研修参加は対象となりますが、OJTなど自社で行う研修は一般的には対象外となります。
なお制度の整備や計画の作成や届出を行う必要があり、いったん助成金を受けると廃止が難しくなります。そのため安易な導入は避け、社労士などに相談してからの方が無難です。もちろん条件が合うなら活用した方が、教育の幅も広げられるでしょう。
人材開発支援助成金・キャリアアップ助成金のいずれも窓口は各都道府県の労働局などです。そのほか、東京都にも助成金制度があります。
社員教育のご相談はイー・コミュニケーションズへ
社員教育は会社の将来にプラスに働く施策です。計画的な導入と実施がおすすめです。
社員教育の手段としてeラーニングをご検討の場合は、ぜひ私どもイー・コミュニケーションズにご相談ください。eラーニングのシステムとしては「SAKU-SAKU Testing」を提供しています。教育担当者様の声を反映し改善を行っているシステムで、多くの企業様にご利用いただいております。
テスト形式のアウトプットで学ぶ「テストエデュケーション」により、知識の定着が見込めます。自社のコンテンツが作成可能なのはもちろん、ビジネス系問題も連携してご利用いただけます。ビジネスマナーやコンプライアンスなど汎用的な内容から、業界ごとの知識や階層別の問題もご用意しております。
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