人事考課とは?評価方法と手順・ポイントのほかトレンドもご紹介
企業における人事考課は、単に給与や賞与のために行うものではありません。企業の求める人材像を示すことで価値観を同じくする人材を育成するとともに、従業員のモチベーションやスキルを高めるものです。
この記事では、人事考課の評価方法・手順・ポイントや新しい評価手法についてもまとめます。企業のご担当者様は、ぜひ参考にしてみてください。
目次[非表示]
- 1.人事考課とは
- 2.人事考課の全体像を把握する
- 3.人事考課の目的
- 3.1.➀待遇への反映
- 3.2.②モチベーション・スキルの向上
- 3.3.③適材適所の人事への活用
- 4.人事考課の種類
- 5.人事考課の評価方法
- 6.人事考課の評価のポイントとは
- 6.1.業績考課の評価のポイント
- 6.2.能力考課の評価のポイント
- 6.3.情意考課の評価のポイント
- 7.人事考課制度の運用手順
- 7.1.➀評価の基準・項目など策定
- 7.2.②本人による目標の設定
- 7.3.③自己評価と上司による評価・面談
- 7.4.④査定
- 8.運用のポイント
- 8.1.➀評価の公平性
- 8.2.②評価の透明性
- 8.3.③目標達成のサポート
- 9.客観的な評価を行うための注意点
- 9.1.➀評価する側のバイアスを認識する
- 9.2.②評価される側のバイアスを認識する
- 9.3.③第3者のチェックを仕組み化する
- 10.日本における人事考課の流れ
- 10.1.年功序列による考課の時代
- 10.2.成果主義による考課の時代
- 10.3.ポスト成果主義の考課の時代
- 11.評価方法のトレンド
- 11.1.➀ノーレイティングとパフォーマンスマネジメント
- 11.2.②コンピテンシー評価
- 11.3.③360度評価
- 12.イー・コミュニケーションズにご相談を
人事考課とは
「人事考課」とは、社員の業績や貢献度・勤務態度の評価を行う制度のことです。評価の結果は給与などの待遇・条件に反映されます。企業活動において、従業員の納得度・満足度にかかわる重要なポイントの1つです。
なお、よく似た言葉に「人事評価」があります。「人事考課」と「人事評価」のいずれも同義と考えてよいでしょう。同じ意味で使われることがほとんどです。両者を区別する場合は、「人事考課」は査定などを中心に指すとき、「人事評価」は目標設定など育成に近い面を含むときに使われます。
人事考課の全体像を把握する
まず人事考課の全体像について把握しましょう。人事考課には次の3つの制度があります。
- 等級制度
- 評価制度
- 報酬制度
基本的に、上記の3制度がお互いに連動して人事考課が行われるのがふつうです。それぞれの制度について解説していきます。
等級制度
「等級制度」は、社員を能力や職務で分類し階層化する制度です。人事制度全体の基礎となるもので、等級制度をもとに評価や報酬が決まります。等級制度はさらに次の3種に分けることができます。
- 職能資格制度
- 職務等級制度
- 役割等級制度
職能資格制度は、能力によって社員をランク付け・階層化する制度です。ゼネラリストを育成するのに適しており、長く日本の多くの企業で採用されてきました。一般に経験を積むほど能力が高まるため、年功序列型の人事となりやすくなります。
職務等級制度はいわゆる成果主義で、勤続年数などは考慮せず業績だけをもとに階層化する制度です。近年多くの企業で採用されています。評価基準が明白で納得させやすい反面、目先の成果だけを追う傾向が強まり結果が出るまで時間のかかる業務が敬遠されるデメリットがあります。
役割等級制度は職能資格制度と職務等級制度のハイブリッド型で、社員の役割によって階層を決める制度です。しかし明確な定義はなく、企業によって実際の運用は異なります。ベンチャー企業などで採用されています。
評価制度
評価制度は、社員の能力や貢献度をもとに社員を評価する制度です。ここでの「評価」は報酬や役職への反映は含みません。純粋に成果などの水準を算定・査定するという意味です。
とはいえ評価制度は等級制度や報酬制度と連動していることが一般的で、評価制度の評価をもとに役職や報酬が決定され事実上は地続きとなっています。連動が適切でないと社員の不満の原因となります。
具体的な評価方法としては、業績評価・能力評価・情意評価がありますが、何に重点を置いて評価するかは企業の方針によって異なります。これら3つの評価方法の詳細については後述します。
報酬制度
報酬制度は、評価制度と連動して社員の報酬を決める制度です。報酬は給与や賞与・退職金など金銭が中心ですが、社内報などで働きぶりを紹介したり選抜者のみの研修に参加させたりするといった金銭以外の報酬もあります。ただし役職は報酬ではなく等級に当たります。
報酬制度には、社員のモチベーションを高める、人材の確保や定着を促進するといった目的があります。評価が報酬に適切に反映されないと社員のモチベーション低下や離職の原因となってしまいます。
人事考課の目的
次に、人事考課の目的についてまとめます。究極的な目的は、企業活動の適切な遂行と活発化・利益拡大です。そのための動機づけなどがより具体的な目的となります。ここでは具体的な目的についてまとめます。以下の3点です。
待遇への反映
モチベーション・スキルの向上
適材適所の人事への活用
1つずつ見ていきましょう。
➀待遇への反映
人事考課は、給与や賞与・役職など、待遇に評価結果を反映させるという目的があります。「頑張った人・頑張っている人を高く評価する」ということです。
会社としては、貢献度合に応じて1人ひとりの社員に適切な処遇を与えることが求められます。評価を待遇という形で示し、働きに応じた適切な処遇を与えます。
②モチベーション・スキルの向上
人事考課には、社員のモチベーションやスキルを向上させるという目的もあります。頑張りを評価されることにより、モチベーションが上がります。モチベーションが上がると、さらにスキルを高めることにつながります。
また評価やフィードバックを通じて、企業側が何を求めているかを社員に伝えることができます。それによって、どんなスキルを身に付けてほしいと思われているのか社員も理解することができます。そういった点もスキル向上へとつながります。
③適材適所の人事への活用
人事考課には、適材適所の人事に活用するという目的もあります。1人ひとりの従業員の能力や特性を知ることで、適性のある部署への配置が可能になります。適切な配置によって、業績向上ももたらされるでしょう。
適材適所の実現は、従業員にとってもモチベーション向上などにつながります。そういった点からも業績向上が期待できます。
人事考課の種類
人事考課の種類についてまとめます。どんな側面を評価するかによって、次の3種に分けられます。
- 業績考課
- 能力考課
- 情意考課
いずれか単独で評価するのではなく、これらを組み合わせて総合的に評価することが一般的です。どの側面を重視するかは企業の社風や価値観によって異なります。
それでは、1つずつ見ていきましょう。
➀業績考課
「業績評価」は業績に対する評価です。目標達成できたかどうか、その過程はどうだったかを査定します。多くの企業で広く取り入れられています。
目標と結果の比較で結果が可視化することができ、公平性が高いというメリットがある方法です。過程より結果が重視される傾向にありますが、過程・プロセスをどの程度考慮するかは企業の考え方によります。結果を重視しすぎると、思い切ったチャレンジができなくなるというデメリットがあります。
評価結果をもとに、社員のランク分け(SA・S・A・B・Cなど)を行います。「MBO(目標管理制度)」という考えに基づいた評価方法です。
②能力考課
「能力考課」は、業務上必要な知識やスキルに対する評価です。
「能力」は、「保有能力」「発揮能力」「潜在能力」に分けられます。成果主義の傾向が強い現在は、実際の結果を生んだ「発揮能力」が主な評価対象となることが多いと言えます。
売上などの実績ではない面から、難易度や水準の高い業務をこなした従業員を評価することができます。あるいは、目立たなくても裏方となって全体をフォローしたりトラブル回避に貢献した点なども評価することが可能です。
③情意考課
「情意考課」は、日々の業務の取り組み方や姿勢への評価です。規律性・積極性・責任性・協調性が行動に現れているかを評価します。
まだ結果に結びついていなくても、真面目にこつこつ取り組んでいる社員を評価することができる方法です。
自己評価と上司の評価のほか、同僚や後輩からの評価も合わせて判断すると精度が高い評価をすることができます。
人事考課の評価方法
上記のような評価の対象をどのような方法で評価するか、については次の3つの方法が例として挙げられます。
- 設定した基準との比較
- 社員間の相対的な比較
- 自己申告など
まず、あらかじめ設定しておいた基準と比較するという方法があります。会社として設定してある基準と比較したり、社員ごとに目標を設定して基準とする場合などがあります。
あるいは営業職など成果を数値化しやすい職種の場合など、社員間で成績を比べて上位の成績の社員を高く、下位の社員を低く評価するという方法もあります。
また自己申告や人物評価などをもとに評価する方法もあります。
しかしどれか1つだけで評価するより、これらの評価方法を組み合わせて総合的に評価するのが一般的です。
なお評価するためのツールとして評価シートがよく使われます。評価シートは評価項目がまとめてあり、目標と結果・自己評価や上司の評価が書き込めるようになっているものです。
人事考課の評価のポイントとは
次に、人事考課の評価のポイントについてまとめます。この記事では以下の通り、人事考課の3つの種類に分けてそれぞれのポイントを解説します。
- 業績考課の評価のポイント
- 能力考課の評価のポイント
- 情意考課の評価のポイント
それでは1つずつ見ていきましょう。
業績考課の評価のポイント
業績考課では文字通り対象期間の業績を評価します。目標の達成度で評価する方法が現在は主流です。すでに軽く述べましたが、結果だけではなく過程も評価対象にすることがポイントです。
結果だけを評価すると、すぐには成果の出ない長期的な業務が敬遠され、目先の成果ばかりが重視されるようになります。そのため企業としての基礎体力をじっくり育てることができなくなってしまいます。
また挑戦するという機運がなくなり、成功した前例のある業務を争奪し合うこととなってしまうこともあります。そのほか過程を軽視すると、結果を数値化しにくい管理部門などの不満の原因となる可能性があります。
長期的な視点から見ると、過程も評価することが会社にとってもプラスです。
能力考課の評価のポイント
能力効果は、「保有能力」「発揮能力」「潜在能力」が評価対象です。3つの能力を社員の納得度が高まるようなバランスで評価することがポイントになります。
保有能力はすでに保有しているような過去に業績を生んだ能力です。発揮能力は対象期間に成果を生んだ現在の能力です。そして潜在能力は将来成果を生む可能性を持つ能力です。
先述したように、現在は成果主義の傾向が強く発揮能力が主な評価対象となっています。成果につながっているので納得感が得やすいというメリットがあります。なお潜在能力は不確定だとも言えるため、対象外とするケースもあるようです。保有能力は成果を生んだときに評価の対象となっているはずで、リアルタイムの人事考課の対象としてはあまり向きません。
情意考課の評価のポイント
情意考課は直接成果に結びつかない点も評価できるメリットがあります。
評価項目は「規律性」「積極性」「責任感」「協調性」が一般的ですが、求める人材像を明確にしてから具体的な内容を決めるのがポイントです。求める人物像はどのような資質を持っているかイメージして、具体的な評価項目の内容を決めていきましょう。
また評価の方法としては、自己評価に加えて、上司や同僚・後輩などさまざまな立場の人が評価することがおすすめです。仕事への姿勢はふだん接している人ほどよく見ています。身近な人の評価も加味することで、精度の高い納得感のある評価が可能となります。
人事考課制度の運用手順
一般的な運用手順についてまとめます。具体的には、次の4つの手順に分けることができます。
評価の基準・項目など策定
本人による目標の設定
自己評価と上司による評価・面談
査定
それぞれのステップについて見ていきましょう。
➀評価の基準・項目など策定
初めに、どんな点を見るか・どの程度できることを求めるかを決めます。前述の業績考課・能力考課・情意考課の3分野について、経営理念やビジョン・行動指針などをもとに基準を策定します。さらにより具体的な評価項目に落とし込みます。
完成したら、いったん実際の社員でシミュレーションします。現在の評価や実感と極端に変わる場合は内容の調整が必要です。シミュレーションをもとに検討を行い、最終的に項目と基準を決定します。
労働組合がある場合は承諾を受けて、導入日を告知します。公平かつ透明性の高い評価のためには、事前に評価基準を共有することが重要です。
②本人による目標の設定
評価導入や新年度開始に当たって、社員本人に目標を設定させます。目標は、定量的な目標と定性的な目標に分けて決めさせます。
社員個々の性格にもよりますが、達成しやすいように低すぎる目標を設定したり逆に実力に追いついていない高すぎる目標を設定したりする場合があります。「頑張れば達成できる」のがちょうどよい難易度の目標です。
適切な難易度の目標設定となるよう、会社の意向も踏まえつつ調整します。その際、会社の都合を押し付けて高すぎる目標を設定させることもないようにしましょう。目標が形骸化する要因となる場合があります。
③自己評価と上司による評価・面談
人事考課の対象期間が終わり区切りのタイミングになったら、本人・上司が結果を評価し、両者の評価をもとに面談を行います。期間内の実績についてどう考えているかを共有します。
面談は年に1回期間が終わったときだけではなく、できれば定期的に行う方が好ましいと言えます。
途中でも振り返り・評価を行った方が、目標達成の可能性が高まるからです。年度の目標のほか途中の目標を立てておく、定期的に面談を行う・こまめにコミュニケーションやフィードバックを行うといったことが、目標達成に効果的です。
④査定
それぞれの評価や面談結果、日常的な勤務状況を総合して最終的な評価を決定します。
達成できた点・できなかった点、どういう基準に基づく評価なのかなど、本人にフィードバックを行います。疑問や不満がないか確認しましょう。評価についての不満は、モチベーション低下や離職を引き起こしかねません。
また、評価して終わりでなく来期への期待も伝えましょう。
運用のポイント
人事考課の仕組みを運用するポイントについてまとめます。評価される側が納得できるかどうかが最重要です。納得感を得る仕組みづくりと運用がポイントとなります。具体的には次の3点が挙げられます。
評価の公平性
評価の透明性
目標達成のサポート
1つずつ解説していきます。
➀評価の公平性
まず評価の公平性を担保できる仕組みづくりが大切です。
公平性のためには、評価者は次の点を守る必要があります。
感情的な好き嫌いで判断しない
先入観で判断しない(有名大学卒だから優秀など)
そのためには、評価者への教育が重要です。すべての評価者が同じ基準で評価できることを目指す必要があります。
そのほか、面談では話しやすい環境作りも大切です。面談場所や雰囲気作りはもちろん、日常的な関係性もかかわるでしょう。
さらに、仕組みとしては次のような考慮・工夫が求められます。
キャリアに応じて基準や項目を変える
上司だけでなく同僚や部下の評価も取り入れる(360度評価)
公平性は納得感に直結します。あらゆる点において注意しましょう。
②評価の透明性
評価の透明性も従業員の納得度・満足度を高めるためにたいへん重要です。
透明度の高い評価を実現するためには、まず評価基準を明確化することが前提となります。それにより属人的な評価から脱却することができます。社員同士を比べて評価する「相対評価」より、設定した基準に達しているかどうかで1人ずつ個別に評価する「絶対評価」の方が客観的な評価が可能です。
さらにその評価基準を事前に告知します。どのような基準で評価するかをオープンにするということです。これがなければ、明確な基準があったとしても密室の中で不透明なやり方で評価されているような印象を与えてしまいます。
評価の後は、評価結果の理由などフィードバックすることも大切です。評価された側は、評価基準と理由を照らし合わせて自分で検証することができます。
仮に評価にいったん不満を感じたとしても、透明性が担保されていれば最終的には納得できるはずです。
③目標達成のサポート
面談は期初・中間などにも行い、目標達成のためのアドバイスを行うことも納得度を高めます。人事考課は待遇を決めるというよりも目標達成のために行うという発想の方が、社員にとってもプラスになるでしょう。
評価者の負担なども考慮に入れなくてはなりませんが、できるだけ面談はこまめに行いたいところです。面談という形でなくとも日常的にコミュニケーションを取ると、評価がスムーズになる以上の効果が期待できます。
そのほかフィードバック時に期待感を伝えることも大切です。評価する側・される側という印象を払拭し、ともに目標を目指す仲間という関係性に近づくことができます。
客観的な評価を行うための注意点
客観的な評価を行うためには、いくつか注意しなければならないポイントがあります。次の点が挙げられます。
- 評価する側のバイアスを認識する
- 評価される側のバイアスを認識する
- 第3者のチェックを仕組み化する
客観的な評価は昇給や昇格など人事考課のあらゆる点の基礎になるものであり、非常に重要な業務だと言えます。上記のポイントについて、1つずつ見ていきましょう。
➀評価する側のバイアスを認識する
評価は社員の待遇にも影響を与えるため客観的に行わなくてはなりません。客観的な評価を行うには、評価する側のバイアスを認識する必要があります。評価者が持ってしまいがちなバイアスとしては次の例が挙げられます。
- 人柄や性格に左右される
- 第一印象や過去の評価に左右される
- ネガティブな面に左右される
純粋に能力だけを客観的に評価しなければならない場面でも、相手が友好的だったりアピールが上手だったりすると実際以上に高く評価してしまう可能性があります。そのほか、対象期間ではない過去の評価や第一印象・先入観に影響されることもあります。たとえば注意されてからは改善した側面も、改善前の印象のままで評価してしまうような場合です。とくにマイナス面に左右される傾向があります。
評価する際は上記の例のようなバイアスを持って評価していないか自分を客観視することが必要です。
②評価される側のバイアスを認識する
逆に、評価を受け止める側もバイアスを持っていることがあります。受け止める際の姿勢としては、次のような例が挙げられます。
- 自分を高く評価したい
- 客観的な自分の評価を知りたい
- 自分の評価が自己イメージ通りか知りたい
- 評価を自己成長に役立てたい
上記のような考えが本人の自己評価に反映されている場合があります。自己評価を見る際には、客観的に自己評価できているか注意する必要があります。また、評価の内容は客観的であるべきですが、相手がどのような受け止め方をするかは意識しなくてはなりません。伝え方や表現に活かすことができます。
人事考課への不満を感じる社員は数多く、離職のほか場合によっては訴訟の原因となる可能性すらあります。評価とフィードバックには注意しましょう。
③第3者のチェックを仕組み化する
客観性を高めるためには、評価結果を第3者にチェックしてもらうことも大切です。複数の人が評価を行うことで、評価者それぞれのバイアスを相対化して評価から取り除くことができます。仕組み化して安定的に客観的な評価ができる体制を作りましょう。
その際は、評価結果の根拠やデータをチェックする人に明示する必要があります。根拠がある評価であっても、偏って見える場合など手直しされてしまう可能性があるからです。直接の利害関係のない人によるチェックは客観性が期待できる反面、事情を知らずに評価するという危険性もあります。
評価の材料となる成果などの結果・それに対する評価・評価の根拠のすべてを明示して、それぞれが妥当な関係にあるかをチェックできる体制を整えましょう。
日本における人事考課の流れ
日本において、人事考課は次のような流れで変化してきました。
- 年功序列による考課の時代
- 成果主義による考課の時代
- ポスト成果主義の考課の時代
現在の人事考課の状況を客観視してより深く理解するためにも、それぞれの時代について解説していきます。
年功序列による考課の時代
戦後の復興期から1980年代ごろまでは、日本では年功序列による効果が一般的でした。右肩上がりで経済的な成長が継続し、労働力も豊富な時期が続きます。そういった状況を背景に、企業では終身雇用制による日本的な人事が行われていました。
どの企業に就職するかがどの職種に就くかより重視され、入社してからはゼネラリスト的な育成が行われます。終身雇用により企業間の労働力の移動は少なく、長く勤めている人ほど評価が高くなる傾向がありました。そのため勤続年数と評価が近い関係にあり、終身雇用と相性のよい年功序列による考課が行われます。
しかし勤続年数が長い社員の中には、評価に比して生産性が低いケースが少なくないという弊害がありました。また実力のある若手が不満を感じやすいというデメリットもありました。この影響は古くからある企業には現在も多く残っています。
成果主義による考課の時代
しかし1990年代に入りバブル経済の崩壊とそれに続く経済のグローバル化の加速により、成果主義による考課が広がります。人件費の負担増や労働力の確保が難しくなったことなどにより、年功制の見直しが進みます。年功序列に代わったのが成果主義でした。
成果主義は仕事の成果をもとに評価するもので、インセンティブや年俸制の形で多くの企業に取り入れられます。その際に、目標の達成度に応じて評価を決める目標管理制度がセットで広く導入されました。目標管理制度は今も広く定着しています。
成果主義は健全な形であれば人材の成長や業績向上をもたらしますが、一部では社内の競争の激化やストレスなどの問題を生みました。また古い企業風土を排除し切れないまま成果主義が導入され、結果的に競争力を落とすこととなった例もあります。
ポスト成果主義の考課の時代
2010年代以降、労働力減少や流動化を背景に成果主義による人事制度を見直す企業が増えてきています。近年は評価の目的の1つである人材育成に重きが置かれる傾向があります。
具体的には、従来の目的管理制度は継続しつつ、フィードバックやタレントマネジメントを重視するような例が多くあります。デジタルテクノロジーの進化により人事評価のシステムが普及し、データを活用しやすくなっていることも要因の1つです。
そのほか新しい制度として、社員のランク付けをしない「ノーレイティング」や同僚や後輩も評価者となる「360度評価」、ハイパフォーマーの特徴を評価基準とする「コンピテンシー評価」などを導入する企業も増えてきています。新しい制度については次にまとめます。
評価方法のトレンド
次に、現在トレンドとなりつつある評価方法を紹介します。時代によって評価方法には変遷があります。現在は、次の3つの方法が導入されるようになってきています。
- ノーレイティングとパフォーマンスマネジメント
- コンピテンシー評価
- 360度評価
1つずつ見ていきましょう。
➀ノーレイティングとパフォーマンスマネジメント
「ノーレイティング」とは、「目標管理制度(MBO)」で行われるようなランク付け・年次評価をしない人事評価の方法です。
社員はリアルタイムで目標を設定し、上司と対話しフィードバックを得ます。達成度は、ランク付けでなくフィードバックによってその都度評価されます。
年次にこだわらないため環境の変化に対応しやすく、大手グローバル企業が相次いで導入している方法です。とくにIT系など、流れが刻一刻と変化する業界での例が増えています。
「ノーレイティング」は、未来志向・個人起点で個性を活用するといった特徴のある人材マネジメント手法「パフォーマンスマネジメント」により実現されます。
パフォーマンスマネジメントは目標管理制度と人事評価制度をまとめたような機能を持ち、ノーレイティングに必要なマネジメント方法です。
②コンピテンシー評価
「コンピテンシー評価」は、優れた成果を上げる人材をモデルに評価基準を設定して評価を行う方法です。
職能ではなく行動特性を評価するという特徴があります。評価基準が明確なので、評価する側は評価しやすい・評価される側は納得感が得やすいというメリットがあります。
そのほか、基準と現状との比較がしやすいので改善点を見つけやすいなど、育成面でもメリットがあります。
③360度評価
360度評価は、上司だけでなく同僚や後輩、場合によっては他部署の社員などが評価者となる評価方法です。上司だけが評価する場合、属人的になったりときには偏った評価となってしまう危険性があります。しかし360度評価では、上司が把握しきれないような側面を多角的に評価することができ、実際に近い精度の高い評価が可能となります。納得感も高まります。
ただし評価する側に評価についてレクチャーしておく必要があります。せっかくの多角的な評価が偏った評価になったり、忖度してしまったりする可能性があるからです。
そういったデメリットもあり、360度評価は本人へのフィードバックにとどめて処遇などには反映させない方法を採っている会社もあります。
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