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働き方改革とは?具体的な内容と残業や業界別など課題解決のアイデアまとめ

日本の国力や自社の競争力などを維持・向上させるために、あらゆる点で生産性の向上や労働問題への対応が求められています。「働き方改革」はその実現をめざすもので、多くの対応が法律により企業に義務化されています。
 
この記事では、企業が働き方改革に臨むにあたって必要となる事項をまとめました。企業のご担当者様やリーダー職にある方はぜひ参考にしてみてください。

目次[非表示]

  1. 1.働き方改革とは
  2. 2.働き方改革の背景
  3. 3.働き方改革関連法
  4. 4.働き方改革が解決を目指す課題とは
    1. 4.1.課題|長時間労働の解消
    2. 4.2.課題|非正規社員・正規社員の格差是正
    3. 4.3.課題|多様な労働力の活用
  5. 5.主な変更点
    1. 5.1.変更点|時間外労働の上限規制
    2. 5.2.変更点|勤務時間インターバル制度の導入
    3. 5.3.変更点|年5日以上の有給休暇の取得
    4. 5.4.変更点|月60時間以上の残業の割増賃金率引き上げ
    5. 5.5.変更点|雇用形態を問わない公正な待遇
    6. 5.6.変更点|フレックスタイム制の柔軟性拡大
    7. 5.7.変更点|高度プロフェッショナル制度
    8. 5.8.変更点|産業医・産業保健機能などの強化
    9. 5.9.変更点|労働時間の客観的な把握
  6. 6.違反した場合どうなる?
  7. 7.働き方改革いつから?
  8. 8.働き方改革における「中小企業」
  9. 9.働き方改革と問題点
    1. 9.1.働き方改革と問題点|残業について
    2. 9.2.働き方改革と問題点|運送業の場合
    3. 9.3.働き方改革と問題点|建設業の場合
    4. 9.4.働き方改革と問題点|医師の場合
    5. 9.5.働き方改革と問題点|教員の場合
  10. 10.働き方改革と36協定
  11. 11.働き方改革推進支援助成金とは
  12. 12.働き方改革対策のアイデア
    1. 12.1.アイデア|会議の見直し
    2. 12.2.アイデア|効率化に役立つツール・システムの導入
    3. 12.3.アイデア|多能工化・ワークシェアリングの推進
    4. 12.4.アイデア|子連れ出勤の許可・育児スペース設置
    5. 12.5.アイデア|テレワーク・自宅勤務の推進
    6. 12.6.アイデア|報奨金制度の実施など
    7. 12.7.アイデア|eラーニングによる個々のスキルアップ
  13. 13.人材育成を働き方改革に役立てるならイー・コミュニケーションズにご相談を


働き方改革とは

「働き方改革」は、「一億総活躍社会」実現をめざすための働き方の改革のことです。日本が直面している状況において、生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることが重要な課題になっています。それらの課題を解決することをめざすものです。
 
働く側の視点から定義するなら、1人ひとりの労働者が自分のワークライフバランスで働くことができるよう、多様で柔軟な働き方を選択できる状態を作るための改革です。
 
2018年に働き方改革関連法が成立し、2019年4月より順次施行されています。

働き方改革の背景

働き方改革の背景には、大きく見ると労働力の減少と低い労働生産性があります。
 
なぜ労働力の減少が起こってしまったのでしょうか。まず、労働環境によるワークライフバランスの不均衡、介護や育児との両立ができない状況があります。それらにより出生率が低下し、少子高齢化が進んでいます。その結果生産年齢人口の減少という現実に直面しています。
 
現状のままだと2050年の日本の総人口は9,000万人となり、生産年齢人口は5,000万人前後になると考えられています。生産年齢人口は最多だった1995年は8,726万人でした。ピーク時の約57%に落ち込む計算です。
 
低い労働生産性については、他の国に比べて同じ価値を生み出すために投入する人・時間が多すぎることが指摘されています。高度経済成長を支えた製造業は、まさに人と時間を投入して価値を生むという方法で発展しました。しかし現在は世界的に知識をもとに付加価値を生みだす方向にシフトしており、日本はそれに追いつけていない状況があります。

働き方改革関連法

「働き方改革関連法」とは、既存の労働関連の法律を改正するための法律のことです。以下の法律が関係しています。
 
労働基準法
労働時間等設定改善法
労働安全衛生法
じん肺法
パートタイム労働法
労働者派遣法
労働契約法
雇用対策法
 
なお、「働き方改革関連法」は通称です。正式名称は「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」といいます。

働き方改革が解決を目指す課題とは

働き方改革は、労働力不足の解消によって国際的な競争力を高めることを図るものです。その大きな目標を達成するために目的を分割・具体化すると、出生率を上げること、働き手を増やすこと、労働生産性を向上させることとなります。より直接的には、次の3つの課題の解決を目指しています。
 
長時間労働の解消
非正規社員・正規社員の格差是正
多様な労働力の活用
 
1つずつ見ていきましょう。

課題|長時間労働の解消

まず、長時間労働を解消するという課題があります。
 
長時間労働を解消し短い時間で同じ成果を出せるようになることは、労働生産性の向上そのものです。生産性を向上させて長時間労働を解消するためには、仕事の効率を高めることが必要となります。
 
またこれまでの日本の雇用体系では、「正社員=長時間労働」「育児などで長時間労働ができない人(主に女性)=非正規」という構造になっていました。そのため、生産年齢であっても労働力として活用しきれない層がありました。正社員でも長時間労働しなくて済むようになれば、労働力が増えることも期待されます。
 
さらに働きやすい環境が作られワークライフバランスが改善されたり共働きがしやすくなったりすれば、時間やお金の余裕ができて出生率が向上されることも期待できます。

課題|非正規社員・正規社員の格差是正

次に、非正規社員・正規社員の格差是正という課題があります。
 
日本の非正規社員の賃金は正規社員の約6割となっています。世界の多くの国では約8割となっており、日本は国際的に見ても格差が大きいのが現状です。
 
日本の場合、非正規雇用は全雇用の約4割を占めています。なお非正規のうち約7割がパート・アルバイトです。すでに述べた通り、育児中などの場合は非正規を選ばざるを得ません。しかも賃金、手当、福利厚生などの待遇・処遇に差があります。
 
正規・非正規間の格差を是正することにより、個々のニーズに合った働き方を選びやすくなります。そしてそのことは、労働力が増えることにつながり、ひいては生産性向上などももたらします。
 
また多様な働き方が可能になれば、働く人が増えて世帯所得が増えます。その結果、出生率の改善も期待できます。

課題|多様な労働力の活用

さらに、多様な労働力を活用することも課題です。
 
女性を中心とした育児中や介護中の人、高齢者、外国人、障害者など、現在ではまだ労働力としてじゅうぶん活用しきれていない層がいます。そういった人々が働きやすい環境を作り、労働力として活用することが求められます。
 
2017年の内閣府「高齢社会白書」では、高齢者であっても就業意欲が高い結果が出ています。高齢者も労働力として期待できます。
 
これまで働けていなかったような人たちが働けるようになるということは、労働力が増えるということを意味します。
 
多様な労働力を活用することは、1人ひとりが自分の事情に合わせて働ける環境がなければ実現できません。働きやすい環境づくりと両輪で進める必要があります。

主な変更点

働き方改革関連法施行の後は、同法の施行前と比べてどのような変更点があるのでしょうか。変更点は多岐に及びますが、その中で主だったものを以下にまとめます。具体的には、次の点が挙げられます。
 
時間外労働の上限規制
勤務時間インターバル制度の導入
年5日以上の有給休暇の取得
月60時間以上の残業の割増賃金率引き上げ
雇用形態を問わない公正な待遇
フレックスタイム制の柔軟性拡大
高度プロフェッショナル制度
産業医・産業保健機能などの強化
労働時間の客観的な把握
 
1つずつ見ていきましょう。

変更点|時間外労働の上限規制

時間外労働、つまり残業時間の上限が規制されるようになりました。原則として時間外労働時間の上限が月45時間、年360時間と定められました。
 
臨時的な特別な理由がある場合でも、以下が限度となります。
 
年720時間
複数月平均80時間(2か月~6か月平均が全て80時間を限度とする)
単月100時間未満(休日労働を含む)
 
さらに臨時的な特別な事情がある場合でも、時間外労働が月45時間を超えるのは6か月が限度となります。
 
上記残業時間の上限について1日の目安をもとに言い換えると、大まかには次のようになります。
 
1日平均1時間半程度まで(=年360時間)
どんなに忙しい月でも、休日出勤ありなら1日の平均5時間以下(=単月100時間未満)
忙しい期間でも、2~6か月間の平均は1日約4時間まで(=複数月平均80時間)
1日平均2時間を超える月は6か月まで(=月45時間超えは6か月が限度)
 
より具体的にイメージしやすいのではないでしょうか。ただしあくまで目安なので、実際の残業時間の調整は定められた限度をもとに行ってください。
 
なお建設事業・自動車運転の業務・医師など一部の事業や業務については、上限規制の適用は2024年3月31日まで猶予があります。

変更点|勤務時間インターバル制度の導入

「勤務時間インターバル制度」が導入されました。事業主は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努める必要があります。現時点では努力義務です。インターバルの時間は9~11時間を国は推奨しています。
 
たとえばインターバル時間を11時間とした場合、時間外労働で22時まで働いたなら翌朝は11時間開けた9時以降に出社するということになります。

変更点|年5日以上の有給休暇の取得

有給休暇の取得についての義務が使用者に定められました。10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、年に5日間の年次有給休暇を取得させなくてはいけません。少なくとも有休の半分は消化させなければならないということです。なおここでの「労働者」には、管理監督者や非正規社員も含まれます。
 
「使用者による時季指定」「労働者自らの請求」「計画年休」いずれかの方法で取得させます。また使用者は有給休暇管理簿を作成し、3年間保存することも義務付けられました。

変更点|月60時間以上の残業の割増賃金率引き上げ

すでに時間外労働は25%以上の割増賃金が義務付けられていますが、月60時間を超える時間外労働については割増賃金率が50%に引き上げられました。
 
大企業は義務化がすでに済んでいます。中小企業も2023年4月から同様に義務付けられます。

変更点|雇用形態を問わない公正な待遇

正社員・非正規社員(契約社員・派遣・パート・アルバイトなど)の雇用形態による不合理な待遇差を設けることが禁止され、公正な待遇を確保することが求められます。
 
給与についてはいわゆる「同一労働・同一賃金」のルールを守らなければなりません。賃金のほか、福利厚生、キャリア開発(研修など)も同様です。
 
職務内容、あるいは職務内容・配置の変更範囲が同じ場合の差別的取扱いが禁止されます。職務内容、職務内容・配置の変更範囲が異なる場合でも、「不合理な」待遇差は禁止です。責任の度合いなど合理的な理由がなければ待遇格差は不可ということになります。同一労働かどうかは、いろいろな要素から総合的に判断します。
 
そのほか非正規労働者に対して、使用者は求めに応じて正規雇用労働者との待遇差の内容や理由などの説明義務を負うことになります。

変更点|フレックスタイム制の柔軟性拡大

フレックスタイム制の柔軟性が拡大され、フレックスタイム制の清算期間が1か月から3か月になりました。3か月の総労働時間を満たせば、始業時間と終業時間を自由に決めることができます。総労働時間は500時間強が目安です。暦の日数により多少前後します。
 
清算期間が1か月を超える場合は、労使協定を所轄労働基準監督署長に届け出る必要があります。

変更点|高度プロフェッショナル制度

さまざまな議論もありましたが、「高度プロフェッショナル制度」が導入されました。
 
高度プロフェッショナル制度は、一定の条件を満たす労働者が、一定の要件下で、労働時間や割増賃金(休日・深夜)などの規定の適用を除外されるという制度です。広く適応してしまうと問題が多発するため、条件が厳密に規定されています。
 
職務の範囲が明確で、年収1000万円以上が条件となっています。さらに、高度の専門的知識を必要とする等の業務に従事する場合という点も条件とされています。その他、本人の同意・労使委員会の決議・行政官庁への届出が必要です。
 
具体的な業種としては、ファンドマネージャーやトレーダーなどが当てはまります。

変更点|産業医・産業保健機能などの強化

産業医・産業保健機能などの強化も働き方改革の1つとして盛り込まれています。事業主は産業医が社員の健康管理が行いやすいように、必要な情報を提供するよう義務付けられました。
 
健康診断のほか、長時間労働者への面接やストレスチェックの結果に基づく面接後の措置に関する情報、1か月80時間以上の時間外労働をした社員についての情報などを提供しなくてはなりません。

変更点|労働時間の客観的な把握

産業医による面接指導を行うため、全ての社員の労働時間状況を客観的に把握することが必要となりました。
 
対象には、裁量労働制の適用者や管理監督者なども含みます。

違反した場合どうなる?

内容によっては努力義務ですが、罰則があるものもあります。上記にまとめた例など主だった内容に違反した場合の罰則についてまとめます。
 
時間外労働の上限規制違反…6か月以下の懲役または30万円以下の罰金
所定労働時間を超える労働の割増率違反…6か月以下の懲役または30万円以下の罰金※適用猶予措置あり、詳しくは後述
フレックスタイムに関する違反…30万円の罰金が課せられる可能性
医師の面接指導に関する違反…50万円以下の罰金などの罰則
有給休暇の取得違反…違反1人につき30万円以下の罰金
 
違反の有無にこだわらず、社員の健康や働きやすさのために努力義務の内容もできる限り守るようにしましょう。

働き方改革いつから?

2022年11月現在、ほとんどの内容はすでに施行されています。一部の内容や対象の猶予措置が今後終了し、適用される予定です。具体的には以下の通りです。
 
時間外労働の上限規制…建設業・自動車運転の業務・医師、鹿児島県・沖縄県における砂糖製造業は2024年3月31日まで猶予。同年4月1日以降は法律違反に
時間外労働の割増賃金率…中小企業への猶予は2023年3月31日まで。同年4月1日以降は法律違反に
 
そのほかの内容は、2019年4月から施行となっているものが大半です。一部中小企業に対する猶予期間が設定されていましたが、すでにほとんどの猶予期間が終了しています。

働き方改革における「中小企業」

働き方改革における「中小企業」とはどんな企業を指すかについては、「資本金の額または出資金の総額」または「常時使用する労働者数」が判断の基準となります。
 
「資本金の額または出資金の総額」については、小売業・サービス業は5,000万円以下、卸売業1億円以下、それ以外3億円以下となっています。「常時使用する労働者数」については、小売業50人以下、サービス業・卸売業100人以下、それ以外300人以下です。
 
どちらかの基準に当てはまれば中小企業とされます。なお個人事業主や医療法人など資本金や出資金の概念がない場合は、労働者数のみで判断します。

働き方改革と問題点

働き方改革は問題を解決するためのものですが、内容や業種によっては問題点も指摘されています。具体的にまとめます。以下の点が挙げられます。
 
残業について
運送業の場合
建設業の場合
医師の場合
教員の場合
 
1つずつ見ていきましょう。

働き方改革と問題点|残業について

残業についての問題は、働き方改革における問題点の中でももっとも根深いと言えるかもしれません。
 
実際には裁量がないのに裁量労働制扱いとすることで、結局残業し放題の状態になってしまうなど抜け道が残ってしまっています。あるいはサービス残業・隠れ残業の増加もあります。具体的には、自宅に持ち帰る、休憩時間の労働、タイムカードに打刻しない早出残業などがあります。
 
そのほか残業を減らそうとすることが隠れ残業を生み、かえって非効率を強いることとなってしまっている例もあります。起動・ログイン・PCからの自己申告などの形で、PCの使用状況と勤務時間の記録が連動している場合があります。そのような場合に、残業の申請をしているのは1人なのに複数人がPCを使うなどの例です。数人で1台を交替で使うので非効率になってしまいます。
 
具体的な方策なしに残業を禁じる「ジタハラ(時短ハラスメント)」の例も増えているようです。そもそも残業時間を規制することそのものを疑問視する向きもありますが、社員の心身の健康に大きく影響するので規制は必要です。しかし今後改善すべき点がまだ残っています。

働き方改革と問題点|運送業の場合

運送業の場合は「2024年問題」と呼ばれている問題があります。物流業界(=自動車運転の業務)での猶予が2024年に終わり、問題が発生すると懸念されていることをいいます。
 
とくに残業時間の上限が大きな影響となると予想されています。物流業界は、ほかの業種より規制は緩く年間960時間です。1か月の最高や複数月の平均など、細かい規定もありません。しかし繁忙期と閑散期の差が激しい業種でもあり、年間でならすと960時間を超えてしまうドライバーも一定数存在します。
 
そのため長距離運送の対応が不可能になることや、残業が減り残業手当も減ることでドライバーの収入が少なくなることなどが懸念されています。

働き方改革と問題点|建設業の場合

建設業では、法律の順守と納期を守りながらの業務遂行が危ぶまれています。
 
下請けとなる施工業者は立場が弱く、事情があっても発注元や元請けの求める納期を守らざるを得ません。規制を守りながら納期を守ることが難しいと考えられています。また現場管理の場合、現場の業務が終了してから確認と施錠、さらに帰社してその他の業務を行うことが多くあります。現在のままのやり方では残業を減らすことは難しいでしょう。そのほか業界として、他業界より有効求人倍率が高く人手不足が慢性化しています。それも残業が多くなってしまう一因です。
 
なお国土交通省は公共工事について、工事の種類別に段階を踏んで週休2日を実現できるよう取り組む方針です。また週休2日導入にかかった必要経費に補正係数を掛けた計上が認められます。
 
このように業務の効率化や人材確保の手段を国も講じていますが、さらなる人材確保が必要になったり人件費が増えたりする可能性があります。抜本的な効率化や発注者の理解が必要です。

働き方改革と問題点|医師の場合

医師の場合は、勤務時間など労働環境を守りながら医療の水準を保つことの困難さが指摘されています。
 
医療の世界では、不規則な勤務時間帯に加えて長時間労働が常態化しています。地方はそもそも医師不足です。抜本的な改善が行われない限り、長時間労働をなくしつつ医療水準を保つことが困難だと考えられます。
 
さらに大学病院勤務医の場合、副業・アルバイトの時間が制限され収入減となる可能性もあります。
 
対策として、2024年からは、機能などに応じて医療機関や医師を分類してABCの水準が設定されます。水準に合わせて時間外労働が規制されますが、水準に合わせて規制が緩和されるとも言えます。なおどの水準も一般の規制よりは長時間の時間外労働が認められています。
 
水準によりますが、時間外労働の緩和のためには勤務間インターバルが努力義務・義務となります。

働き方改革と問題点|教員の場合

教員については、長時間労働への依存と、それを自発的なものとし労働と認めない制度が問題視されています。
 
教員は、課外活動や事務作業、保護者への対応など業務が多岐に渡り、長時間労働が常態化しています。しかし「給特法」(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)という法律があり、時間外労働への手当の支払いが不十分となってしまっています。
 
正確な労働時間の把握、業務の効率化や専門指導員への業務移管、業務そのものの必要性の見直しなどが急務となっています。

働き方改革と36協定

「36協定」は、労働基準法第36条に基づく、時間外労働を行うのに必要な労使協定の通称です。「さぶろくきょうてい」と読みます。
 
労働基準法で定められた労働時間の上限を超えた時間外労働・休日労働をさせるために、36協定の締結が必要となります。締結した場合も時間外労働の時間は最小限にとどめ、労働者の健康・福祉を確保することが求められています。
 
時間外労働を行う場合は労働者が1人でも締結が必要です。絶対に時間外労働がないのなら不要ですが、締結なしに時間外労働をさせると違反となります。なお締結だけでなく、労働基準監督署への届出が必須です。有効期限は最長1年が好ましいとされます。
 
労働者の「過半数」が条件となっています。社員の過半数で組織する労働組合がある場合は労働組合と協定し、ない場合は労働者の過半数を代表する者を選出して締結します。代表者を選出する場合は、労働基準法41条2号の「管理監督者」から選挙・挙手で選出しなくてはなりません。

働き方改革推進支援助成金とは

「働き方改革推進支援助成金」は、生産性を向上させ、時間外労働の削減、年次有給休暇や特別休暇の促進に向けた環境整備への取り組みに対する厚生労働省による支援です。なお2022年11月時点では、申請と予算残額の状況によりいったん受付を中止しています。
 
対象は中小企業主です。「中小企業」は、先述した資本金・出資金あるいは労働者数による規定によります。
 
労務管理や人材確保・労働能率増進のための設備や機器など、9つの取り組みが支給対象で、実施に要した費用の一部が支給されます。時間外労働の縮減・有給休暇の規定導入など、成果目標の設定と実施期間の規定があります。成果目標の達成に応じて支給額が決定されます。

働き方改革対策のアイデア

どのように働き方改革の対策を行っていくか、具体的なアイデアについてまとめます。時間外労働や休暇など法律で定められた制度を整備するのは大前提です。そのほかのアイデアについてまとめます。
 
基本姿勢としては、業務内容の棚おろしをしたうえで、優先度の低い業務のカットや作業の効率化、業務の分担がしやすい状況を作ることです。以下のような例があります。
 
会議の見直し
効率化に役立つツール・システムの導入
多能工化・ワークシェアリングの推進
子連れ出勤の許可・育児スペース設置
テレワーク・自宅勤務の推進
報奨金制度の実施など
eラーニングによる個々のスキルアップ
 
1つずつ見ていきましょう。

アイデア|会議の見直し

まず会議の必要性自体を見直して、負担の少ないほかの方法を考えてみます。たとえば定例会議や報告は、チャットツールやメールで共有したり文書を回覧したりして済ませることができるでしょう。作業の効率化や生産性向上につながります。
 
あるいは効率よく会議を行う仕組み作りという方法もあります。例としては、事前に議題を周知しておく、会議のゴールを明確化・共有しておくなどです。会議の時間を短縮できるでしょう。
 
そのほかの方法としては、関係の薄いメンバーは不参加にして自分の業務を優先させる、時間の短縮や遅い時間帯は避けるなど時間を工夫する、準備や記録の時間と労力を削減するために作成資料を減らしたり議事録を会議中に使用したホワイトボード画像に置き換えたりする方法などがあります。

アイデア|効率化に役立つツール・システムの導入

手動で行っている業務を、ツールやシステムで自動化・省力化するという方法です。例としては、給与計算・人事評価・出入金処理・受発注管理などの業務のシステム導入があります。
 
作業の効率化と生産性向上につながります。とくに、必要であっても付加価値を生まない業務や定型業務はシステム導入に向いています。
 
そのほかには、チャットツールやオンライン会議システムなどコミュニケーションツールの導入や、書類のテンプレート化、決裁業務などのオンライン化が挙げられます。

参考:​​​​​​​絶対に失敗しない!勤怠管理システムのポイントとおすすめ22種を比較|HRソリューションラボ

アイデア|多能工化・ワークシェアリングの推進

社員の多能工化やワークシェアリングの推進にも効果があります。多能工はトヨタが始めたことで知られている手法です。
 
ジョブローテーションや教育・マニュアル作成などにより、お互いに業務を把握します。現場作業では、1人で複数の作業を行える多能工化や作業を分担するワークシェアリングが可能です。オフィスワークでは、情報を共有フォルダで管理するなどしてワークシェアリングします。そのほか、チームプレイやペアプレイなどの手法もあります。
 
同じ作業ができる人を増やすことによって、忙しいときの業務の分散や有休取得時などの代理ができるようにします。

アイデア|子連れ出勤の許可・育児スペース設置

社内に育児スペースを用意したり子連れ出勤を許可したりすることも、働き方改革の施策の一環となります。これらの導入により、育児中の世代も労働力として活用することができます。多くの女性が存分に能力を発揮する機会がない状態が続いています。その状態を解消することができます。
 
子どもの安全のためにも育児スペースや事業所内保育などの設備を用意することが好ましいでしょう。女性社員だけでなく男性社員の子連れも認める、社員間のフォロー体制を築くなども同時に行うことが大切です。

アイデア|テレワーク・自宅勤務の推進

テレワークや自宅勤務を推進している会社も現在では多い施策ですが、出社しなくても仕事ができる体制作りも働き方改革につながります。
 
働き方の多様性につながり、働きやすさの実現や労働力の確保に効果があります。作業端末やコミュニケーションツールの準備をしたうえで導入します。そのほか社内ルールの策定など、ハード面以外の整備も必要です。
 
自宅のほか、サテライトオフィスを準備する方法もあります。

アイデア|報奨金制度の実施など

報奨金制度を実施する方法もあります。能率化などについて部署ごとの目標を設定して、達成した場合に報奨金を支給します。部署のコミュニケーションに役立つようにと、食事代などの形で支給しているケースもあるようです。
 
時間外労働削減分を報奨金として支給している会社もあります。時間外労働を抑えつつ社員の収入を保つ施策と言えます。
 
報奨金以外の形としては、人事評価に時間当たりの効率など業務効率化の指標をプラスするという例もあります。

アイデア|eラーニングによる個々のスキルアップ

eラーニングによる業務のスキルアップも働き方改革に役立てることが可能です。1人ひとりがスキルアップすることにより生産性を向上させることができます。
 
そのほかの研修・教育方法と比べても、eラーニングの形式は働き方改革との相性も良いと言えます。テレワークやスキマ時間活用による業務効率化などと組み合わせやすいからです。
 
コンテンツとして、ワークライフバランスやストレスマネジメントなどが用意されている場合もあります。そういったコンテンツは社員の意識向上にも役立てることができます。

人材育成を働き方改革に役立てるならイー・コミュニケーションズにご相談を

働き方改革のための生産性向上はさまざまな側面からアプローチすることができ、またそうすることが求められています。ルールなどの仕組み作りと社員のスキルアップを両輪で進めることが、短い時間で高い効果を得るための秘訣です。そしてスキルアップの方法としてはとくにeラーニングが適しています。

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