スキルアップとは?企業にとってのメリットとスキルアップを図る施策・ポイント
「スキルアップ」というと社員にしかメリットがないように思われがちですが、そんなことはありません。社員がスキルアップすることにより企業にもメリットが生まれます。スキルアップの支援・補助を行うことにも企業にとってメリットがあります。
この記事では、具体的なメリットのほか社員がスキルアップを目指すようになる施策とポイントについてまとめます。総務のご担当者様など、かかわる部署の方はぜひ参考にしてみてください。
目次[非表示]
- 1.スキルアップとは
- 1.1.会社におけるスキルの例
- 1.2.「キャリアアップ」「ブラッシュアップ」との違い
- 2.企業から見たスキルアップのメリット
- 2.1.➀生産性向上・業績向上
- 2.2.②社員のモチベーション・エンゲージメント向上
- 2.3.③採用ブランディング
- 2.4.④人材の定着率向上
- 3.社員から見たスキルアップのメリット
- 3.1.➀取引先からの評価向上
- 3.2.②会社からの評価向上・待遇への反映
- 3.3.③キャリアアップの可能性が高まる
- 3.4.④自己肯定感・充実感の向上
- 4.「カッツ・モデル」によるビジネススキルの分類
- 4.1.テクニカルスキル
- 4.2.ヒューマンスキル
- 4.3.コンセプチュアルスキル
- 5.向上すると自社にもプラスのスキルとは
- 5.1.パソコンスキル
- 5.2.コミュニケーションスキル
- 5.3.ロジカルシンキング
- 5.4.業務上の専門知識
- 5.5.コーチング・マネジメント
- 6.戦略的にスキルアップを支援する手順
- 6.1.➀必要なスキルをリストアップする
- 6.2.②社員のスキルの現状を把握する
- 6.3.③不足スキルを洗い出す
- 6.4.④育成方法を検討する
- 6.5.⑤育成の実施とPDCAを行う
- 7.スキルアップを促す方法
- 7.1.➀研修・eラーニングなどの実施
- 7.2.②手当・支援や補助の制度などの整備
- 7.3.③配置換え・ジョブローテーションなどの実施
- 7.4.④副業を認める・推奨する
- 7.5.⑤時間や環境を整える
- 8.効果を高めるポイント
- 8.1.➀能力評価・スキル評価などと連動させる
- 8.2.②待遇への反映などメリットを可視化する
- 8.3.③一過性でなく継続できる仕組みを作る
- 9.スキルアップ学習ならイー・コミュニケーションズにご相談を
スキルアップとは
「スキルアップ」とは、研修や学習を通じて能力を高めることです。ビジネスにおけるスキルアップの「能力」とは、仕事に必要な能力や、より高いクオリティの仕事をするために必要な能力だと言えるでしょう。
スキルアップと言うと、すでに持っている能力を今以上に高めるというイメージがあるかもしれません。しかしそれだけではなく、新しく技術を身に付けることもスキルアップの1つです。資格の取得もスキルアップと言ってよいでしょう。
新しい能力も資格も仕事にプラスになります。スキルアップとして幅広く捉えましょう。
会社におけるスキルの例
会社における「スキル」は、いくつかの種類に分けることができます。まず業務を遂行するのに直接必要となるものがあります。簿記・PC操作・加工機械の操作技術などがその例だと言えるでしょう。これらはおもに学習や経験などで習得するスキルです。
ほかには業務を円滑に行うために必要となるものがあります。コミュニケーション能力やロジカルシンキングなどがこれに当たります。これらは学習で身に付けることができますが、必ずしも特別な学習を必要としません。日常生活で身に付けたり個人の特性として習得している場合もあります。
さらに技術・知識・心構えなどもスキルの一部と言ってよいでしょう。経験や資格を含むこともあります。
「キャリアアップ」「ブラッシュアップ」との違い
混同されたり紛らわしかったりする言葉に、「キャリアアップ」や「ブラッシュアップ」があります。スキルアップとの違いを確認しておきましょう。
「キャリアアップ」は、社内でも転職先でも今よりも経歴・役職が上がることを言います。たとえば、昇進・より大きな会社への転職・非正規から正規雇用への変更などです。このようにキャリアアップは能力ではなく役職や経歴が向上・改善することをいいます。
「ブラッシュアップ」は、商品や業務について改善を行ってクオリティを高めることです。こちらは人の能力ではなく商品やサービス・行動のクオリティに関わる語です。
企業から見たスキルアップのメリット
社員がスキルアップすること・社員のスキルアップの支援をすることについて、企業から見た場合のメリットをまとめます。具体的には次のような点が挙げられます。
- 生産性向上・業績向上
- 社員のモチベーション・エンゲージメント向上
- 採用ブランディング
- 人材の定着率向上
1つずつ見ていきましょう。
➀生産性向上・業績向上
社員が業務に必要なスキル・改善に役立つスキルを身に付けることにより、社員の、ひいては部署・会社全体の生産性の向上が見込めます。能力が高まると短い時間で同じ成果を出せるようになるからです。
さらに業務の効率化・生産性向上は、労働時間の短縮など労働環境の改善や業績アップに役立ちます。同じ量の業務を短い時間で終わらせたり、今までと同じ時間でより多くの業務をこなしたりできるようになるからです。
②社員のモチベーション・エンゲージメント向上
スキルアップにより社員の能力が高まると、業務へのモチベーションも高まることが期待できます。業務の幅が広がったり業務の品質が高くなったりすることがよい循環を生むためです。わかりやすく言い換えれば、できることが増えたりうまくできるようになったりすると仕事が楽しくなるということです。
とくに会社が社員のスキルアップをバックアップしてくれる場合は、エンゲージメントも高まります。エンゲージメントの高い社員が増えるほど、周囲へのよい影響も期待できます。
③採用ブランディング
企業がスキルアップに協力する場合、採用にプラスとなり採用ブランディングに役立ちます。スキルアップの援助を行うことは、社員を大切にしていることの現れです。採用ブランディングにプラスの効果があり、応募者に好意的に見られるようになります。
会社のイメージが向上することにより、応募者の数も増えます。その結果、採用する側としても選択の幅が広がりよい人材を確保しやすくなります。よい人材はスキルの高いことも多いため、さらなる相乗効果を生むことも可能です。
④人材の定着率向上
社員のスキルアップを支援することにより、社員の定着率も向上します。会社に大切にされているという満足感が得られたり向上心が満たされたりして、社員の満足度が高まるからです。
「スキルが高まると他社へ流出するのでは?」と不安になるかもしれませんが、心配は無用です。社員の満足度が高まると、わざわざ転職する必要がなくなるからです。もちろん労働環境の整備も必要ですが、満足感は内的なモチベーションとなります。エンゲージメントも高まるのはすでに述べた通りです。
社員から見たスキルアップのメリット
次に社員にとって、自分がスキルアップすることのメリットをまとめます。以下のような点が挙げられます。
- 取引先からの評価向上
- 会社からの評価向上・待遇への反映
- キャリアアップの可能性が高まる
- 自己肯定感・充実感の向上
1つずつ見ていきましょう。
➀取引先からの評価向上
スキルが高まり業務のクオリティが高まると、取引先からの評価が向上します。先方の安心感や信頼感が高まって、コミュニケーションがしやすくなったり、細かい確認なしに任せてもらえたりするようになります。その結果、仕事がやりやすくなります。
営業職なら、直接的に自分の業績にもよい影響があるでしょう。自分のモチベーション向上にもつながります。
②会社からの評価向上・待遇への反映
スキルが高まると、取引先だけでなく社内でも上司や経営陣などからの評価が高まります。作業の技術に関するスキルは品質を向上させ、管理に関するスキルは環境を改善したりチームの業務をスムーズにしたりします。このようにスキルアップは会社にとってもプラスとなるからです。もちろん取引先の信頼も会社にとってプラスです。
評価を形にする仕組みがある場合は、給与や賞与などの待遇もよくなるでしょう。充実感や満足感などの内的なモチベーションに加えて外的なモチベーションとなり、さらに大きなやりがいも得られます。
③キャリアアップの可能性が高まる
待遇・処遇については、給与・賞与だけでなく将来的に社内で昇進できる可能性も高まります。とくにリーダーシップやコーチングなどのスキルアップができると、管理職としての資質も高まります。
転職する場合も、よりよい条件の転職先が探しやすくなります。社内・転職いずれに関してもキャリアアップにつながる可能性が高まるでしょう。もちろん人の管理だけでなく技術の習得についても同じことが言えます。
④自己肯定感・充実感の向上
スキルアップすることによって、自己肯定感や充実感が得られたり向上したりします。わかりやすく言い換えるなら、自信が付いたり仕事にやりがいを感じたりできるようになるということです。
できることが増えたり自分の仕事の品質が高まれば当然だとも言えるでしょう。またスキルアップすれば周囲からの評価や信頼感も高まります。それもさらに相乗効果となって自己肯定感や充実感が高まります。
「カッツ・モデル」によるビジネススキルの分類
人材育成などの場面においては、ビジネススキルを分類して把握する「カッツモデル」というフレームワークが役立ちます。カッツモデルはロバート・カッツ氏が提唱した考え方で、ビジネススキルを次の3つに分類して捉えます。
- テクニカルスキル
- ヒューマンスキル
- コンセプチュアルスキル
カッツ・モデルでは、上記3つのスキルが必要とされる割合が役職に応じて異なると考えます。
なお、役職は次の3つに分けて考えています。
- トップマネジメント:社長をはじめとした経営層など幹部クラス
- ミドルマネジメント:部長・店長・支店長・エリアマネージャーなど中間管理職
- ロワーマネジメント:一般社員や係長など現場で働く非管理職
以下に、3種のスキルの内容と役職ごとの重要度について解説していきます。
テクニカルスキル
「テクニカルスキル」は、業務を遂行する能力です。現場で働く非管理職である「ロワーマネジメント」に必要な知識とされます。
テクニカルスキルの具体的な内容は業種によって異なります。少しずつですがいくつかの職種における具体例を挙げます。
- 販売職:接客スキル、商品知識
- 営業職:商品知識、提案力
- 事務職:パソコンスキル、電話応対スキル
- 技術職:機械操作スキル、素材の知識
もちろん上記のほかにも多くのテクニカルスキルがあります。あらゆる職種において、それぞれのテクニカルスキルが存在します。いずれにせよ、業務を行う上で直接的に必要となるスキルがテクニカルスキルです。
企業で社員のスキルアップを考える場合、まず初めに身に付けさせるべきはこのテクニカルスキルということになります。
ヒューマンスキル
「ヒューマンスキル」は、対人スキルです。良好な人間関係を築き維持するために必要となるスキルです。
ヒューマンスキルは、トップマネジメント・ミドルマネジメント・ロワーマネジメントのいずれにも等しく必要とされます。具体的には次のスキルが挙げられます。
- リーダーシップ
- プレゼンテーション力
- ヒアリング力
- 交渉力
- 動機付け
同僚同士の横のやり取りも上司や部下との縦のやり取りも、またどんな役職においても、上記のようなスキルが必要なのはたやすく理解できるでしょう。ヒューマンスキルがあることで、協力しながら業務をスムーズに進めることが可能になります。
ヒューマンスキルは階層を問わず必要となるスキルなので、人材育成において戦略的に習得させると自社にもプラスになります。ただし階層や職種によって多少求められる具体的なスキルが異なります。たとえば事務職には交渉力やプレゼンテーション力はそれほど必要ありませんが、営業職には必要です。職種や階層に合わせたスキルの習得を狙いましょう。
コンセプチュアルスキル
「コンセプチュアルスキル」は、本質を見極めて判断するスキルです。「概念化力」とも言われます。
コンセプチュアルスキルは、主にトップマネジメントに必要とされるスキルです。いくつかスキルの例を挙げます。
- ロジカルシンキング(論理的思考)
- クリティカルシンキング(批判的思考)
- ラテラルシンキング(水平思考)
- 多面的視野
- 知的好奇心
- 洞察力
このほかにも多数あります。テクニカルスキルが作業を行うための具体的なスキルであるのに対し、コンセプチュアルスキルは正確に認識する能力や抽象的な思考力です。
人材育成においては、リーダー候補にコンセプチュアルスキルを習得させることで、将来のリーダーを育てることが可能となります。また候補を選抜する際も、上記のようなスキルを持っているかどうかで資質があるか判断するのに役立ちます。
向上すると自社にもプラスのスキルとは
カッツモデルの3種のスキルを確認しましたが、まずはテクニカルスキルを向上させることが企業活動の効率や業績の改善・向上に役立ちます。具体的には以下のスキルを習得させると、基本的な業務遂行能力を底上げすることができると言えるでしょう。
- パソコンスキル
- コミュニケーションスキル
- ロジカルシンキング
- 業務上の専門知識
- コーチング・マネジメント
それぞれのスキルについて確認していきましょう。
パソコンスキル
パソコンスキルは、現代のビジネスにおいては最低限のスキルと言えるでしょう。書類の作成からメールやコミュニケーションツールでのやり取り、数値の分析などありとあらゆる作業がパソコンを使って行われます。
さらにDXの必要性が叫ばれる現在、あらゆる業務がクラウド上などに構築されたシステムを活用して行われます。基本的なパソコンスキルは部署や職種を問わず習得させる価値があるでしょう。
新入社員となる若い世代は、デジタルデバイスを使い慣れていながらもスマートフォンしか使えない層も一定数います。新人研修にはパソコンの操作方法を盛り込みましょう。
コミュニケーションスキル
コミュニケーションスキルは、すでに述べたようにあらゆる階層に必要とされるヒューマンスキルの1つです。企業が社員の集まりであり業務を分担して企業としての活動を行う以上、社員同士のやり取りは欠かすことができません。全員がコミュニケーションスキルを持っているとスムーズなやり取りを実現しやすくなります。
コミュニケーションスキルは日常的な意思の疎通はもちろん、報連相や会議などでも役立ちます。また営業職などコミュニケーションスキルが直接的に業績に結びつく職種もあります。
参考:コミュニケーション能力が高い人の特徴7選と高める秘訣4選を紹介!:Life and Mind+
ロジカルシンキング
ロジカルシンキングは主にトップマネジメントに必要とされるスキルとされますが、どの階層においても有用です。階層を問わず、直面する課題を分析・解決するときには論理的に考える力が必要です。業務の精度を高めるのに役立つスキルだと言えるでしょう。
ロワーマネジメント層にもロジカルシンキングが浸透していると、効率的に業務を進めることができます。意見の一致がしやすくなるほか、議論の場でも感情より論理優先で話し合うことができるようになります。
参考:論理的思考(ロジカルシンキング)を効率的に鍛える方法3選:日本コミュニケーション能力認定協会
業務上の専門知識
業務上の専門知識は、まさにテクニカルスキルそのものです。業務を行う上で必須であり、社員教育のごく早い時期に身に付けさせるべき内容です。
ステップアップしていくのに従って、身に付けるべき専門性も高まっていきます。新入社員研修にはじまり階層別の研修に至るまで、計画的に習得させていくようにしましょう。
eラーニングなどの形で効率的に知識を習得させてから、OJTで実践を通じて定着させるのが効果的です。OJTではより業務遂行能力を高めるコツや裏技を学ぶこともできます。
コーチング・マネジメント
コーチングやマネジメントのスキルも広く習得させておくとメリットがあります。どちらもリーダーに必要となるスキルです。コーチングとマネジメントのスキルがある社員が多いほど、層に厚みが生まれてリーダー候補を選ぶときに選択肢が多くなります。
OJTでは先輩社員が新人の教育に当たります。そのときコーチングのスキルが役立ちます。OJTに限らず、日常的に後輩に教えることがある場合も同様です。
マネジメントを多くの社員が学ぶと、問題意識を持ち経営者の視点から物を見ることができる社員も増えます。いろいろな場面でプラスに働くでしょう。
戦略的にスキルアップを支援する手順
次に、戦略的にスキルアップを支援する際の手順についてまとめます。以下の手順で行います。
- 必要なスキルをリストアップする
- 社員のスキルの現状を把握する
- 不足スキルを洗い出す
- 育成方法を検討する
- 育成の実施とPDCAを行う
それぞれのステップについて、1つずつ具体的に見ていきましょう。
➀必要なスキルをリストアップする
まず、会社としてどのようなスキルを必要としているかリストアップします。必要なスキルは事業内容や中長期の経営計画などによっても変わります。また現場の意見をヒアリングして、どんなスキルが必要とされているのか確認するのも有効な方法です。
このように、リストアップする際にはゴールを意識することが大切です。「どんな状態に変えたいのか」というゴールを決めて、そのゴールに到達するために必要なスキルを逆算する方が戦略的なスキルアップを行うことができます。
その際、カッツモデルなどを参考にするのも有効です。どの層に対して教育を行ったりスキルアップを支援したりするのかが明確になる場合があります。
②社員のスキルの現状を把握する
次に社員のスキルの現状を把握します。現場へのヒアリング、年間目標の達成度の確認、所有資格の確認などさまざまな手段が考えられます。ほかの業務とのバランスもありますが、可能ならいろいろな方法でチェックしましょう。
初めから対象が決まっている場合は対象となる層を抽出して確認します。ゼロベースで対象を決めるところから企画する場合は、いろいろな条件でグルーピングしてみてグループごとの現状を把握する方法もあります。
またスキルの現状を把握することで、初めにリストアップした内容とは別のスキルの必要性に気付くことがあるかもしれません。そのような場合は初めのリストにこだわらず、新たな課題が明確になったと捉えましょう。
③不足スキルを洗い出す
現状を把握できたら、不足スキルを洗い出します。必要なスキルと現状とを比較して、どのスキルが不足しているか明確にします。
不足スキルが多い場合は優先順位を考えます。優先順位は重要度と緊急性をもとに判断します。緊急に対応しなければならない内容があればやむを得ませんが、戦略的に社員のスキルアップを計画するなら重要度の高いものを優先したいところです。
スキルの不足を解消するとどう変化するかをイメージしながら、どのスキルを習得させるか選びましょう。もちろん初めから1つしかない場合や簡単に絞り込める場合はこの限りではありません。
④育成方法を検討する
内容が決まったら、その内容を最適な形で習得させるにはどのような方法がよいか検討します。スキルアップというと研修などの形がすぐに思い浮かびます。実際、研修の形で行うことも多くありますが手段はほかにもあります。
たとえば評価制度に必要スキルを反映させるといった方法が考えられるでしょう。そのほか研修にしても、OJT・講義・グループワーク・eラーニングなど多様な方法があります。それぞれの方法には適した期間や内容があるので、習得させるスキルはどのぐらいの時間があれば習得できるかも考える必要があります。
また具体的な方法を検討する段階では、コスト面も考慮する必要があります。方法ごとにかかる費用を比較して、費用対効果も検討して決定しましょう。
⑤育成の実施とPDCAを行う
選択した方法で育成を行います。終わったら、記憶が薄れる前に担当者の反省や学習者の意見などアンケートを行って結果をまとめておきましょう。
さらに効果測定とPDCAを行いましょう。習熟度の効果測定を行うと、育成方法がどの程度うまく行ったかを把握することができます。さらにそのスキルを習得した人が増えた場合に、業務にプラスとなったかの効果測定の両方を行うとスキル自体の有効性が検証できます。
方法自体の効果も重要ですが、戦略的にスキルアップを図り自社の業績に役立てるためには、業務にどのぐらい役立っているかの効果を測定することが必要だと言えます。
スキルアップを促す方法
会社として、社員にスキルアップを促す方法についてまとめます。具体的には次のような方法があります。
研修・eラーニングなどの実施
手当・支援や補助の制度などの整備
配置換え・ジョブローテーションなどの実施
1つずつ見ていきましょう。
➀研修・eラーニングなどの実施
1つめの方法は、研修やeラーニングによる学習などを行うことです。会社側で身に付けてほしいスキルが明確な場合や、人材育成の計画がある場合に有効な方法です。
研修は社内で行う場合もありますが、外部の研修に参加する形式が一般的です。近年はオンラインのウェビナーも多く開催されています。
eラーニングは、サービス側で教材が準備されている場合も多くあります。新卒向けのビジネスマナーから専門的な知識まで、必要な内容を選ぶことができます。オリジナルの教材を作成することも可能です。
内容により全員一律に行うこともありますが、スキルについては入社年数や役職などで対象者を選んで実施することが一般的です。全体を俯瞰して、効率よくスキルアップを図るときには研修・eラーニングが適しています。
②手当・支援や補助の制度などの整備
次に、資格の取得や書籍購入・セミナー参加などの学習の費用を一部負担するという方法があります。すでに所有している資格に対して手当を支給する方法もあります。
社員の自発的な意欲を尊重したいときに向く方法です。一般的には社員が自分で選んだり見つけたりした資格や学習方法を申請して、それに対して必要な費用を負担します。
ただし手当や費用の金額設定、対象とする内容などは検討が必要です。自発的な学習のためには制限が少ない方がいいのですが、業務とかけ離れた内容だときりがなくなってしまうからです。とくに手当は継続して支払う必要があります。原資をよく考えてから決めましょう。途中で手当を廃止するとモチベーション低下につながります。
③配置換え・ジョブローテーションなどの実施
配置換えやジョブローテーションなどもスキルアップにつながります。部署ごとに必要なスキルが異なるため、いろいろな部署を経験させることでさまざまなスキルが身に付きます。担当業務につながりのある他部署での経験は、担当業務に戻ったときに理解度が深まり仕事に厚みが生まれるでしょう。
配置換え・ジョブローテーションは会社主導で計画的に行うことがほとんどです。ただし終身雇用など従来の日本型の雇用形態を前提としているため、欧米的なジョブ型の雇用を導入している場合にはズレがある可能性もあります。
さらに不慣れな部署への配置換えや、希望と違う部署に配属されたといった理由などでモチベーションが下がるケースもあります。注意が必要です。
④副業を認める・推奨する
副業もスキルアップに役立ちます。近年は副業を解禁したり、一歩進めて推奨している企業もあります。副業することにより新しいスキルや知識を身に付けることができます。また本業のスキルを活かす内容であればより多くの経験を積むことができ、スキルアップが期待できます。
そのほか転職する必要性がなくなるため定着率が向上して、優秀な人材の流出を防ぐことにもつながるでしょう。副業でできた新しい人脈が本業に役立つ可能性もあります。このようにスキルアップ以外の効果も期待できます。
本業に支障をきたす可能性や情報漏洩のリスクを不安に思う場合は、就業規則や評価基準を見直してあらかじめ社員に周知しておくなどの対策を行いましょう。
⑤時間や環境を整える
勤務時間や環境を整えることも社員がスキルアップする助けになります。新しいことを学ぶためには時間もかかりますし、周囲の環境も大きく影響するからです。
時間については、フレックス制の導入や残業時間の削減などが考えられます。スキルアップのための講座受講などがしやすくなります。あるいは副業希望のパートタイムの労働者を雇用する方法もあります。
環境については、終身雇用制が崩壊した現在、スキルアップが望めない環境は選ばれないようになりつつあります。上で述べたような手当や補助などの制度を整備したり、評価制度やキャリアプランの制度、継続的な教育制度などを整えましょう。
効果を高めるポイント
さらに効果的にスキルアップを促したり、自社に必要なスキルを向上させたりするためにもポイントがあります。次に、効果をより高いものにするためのポイントをまとめます。具体的には次の3点が挙げられます。
能力評価・スキル評価などと連動させる
待遇への反映などメリットを可視化する
一過性でなく継続できる仕組みを作る
1つずつ見ていきましょう。
➀能力評価・スキル評価などと連動させる
まず、能力評価やスキル評価などと連動させることで、自社に必要なスキルアップを促すことができます。
会社にどんなスキルの人材が不足しているのか、個々の社員の現状のスキルはどうかなどを、能力評価やスキル評価の結果をもとに確認します。どんなスキルが今後自社に必要となるのかなども確認します。そうして自社に必要なスキルをあぶり出します。
研修の内容・補助を出すスキルの選定などの方向性に、求めるスキルを反映させます。それにより、会社にとって必要なスキルを伸ばすことができます。
②待遇への反映などメリットを可視化する
保有スキルやスキル獲得を待遇に反映させることによって、スキルの習得が直接的なメリットとなることを可視化できます。どのようなスキルを持っていればどのように待遇にプラスとするかを検討します。
求めるスキルは給与・賞与など待遇に反映させ、補助・支援する内容などを周知します。周知しなければメリットも認識されません。しっかり伝えましょう。
なおすでに述べましたが、金額の決定は費用対効果など含めて長期的な視点で検討します。負担が大きくなって継続できないということのないようにしましょう。途中で中止すると社員の不満につながります。
③一過性でなく継続できる仕組みを作る
スキルアップの取り組みは、仕組み化して継続できる体制にすることも大切です。社員全体のスキルの底上げには時間がかかります。一過性の取り組みで終わって形骸化してしまうと、思うような効果が得られません。
運用し続けられるよう、負担を少なくする工夫ができないか検討しましょう。既存の仕組みやデータのうち流用したり参考にしたりできるものがあれば、取り組みに活用・連動させます。
そのほかeラーニングの導入など、外部のシステムの活用により自社の負担なしに定期的な研修・学習を実施する方法も考えられます。
スキルアップ学習ならイー・コミュニケーションズにご相談を
社員のスキルアップの一環にeラーニングをご検討中なら、ぜひ私どもの「SAKU-SAKU Testing」も候補としてみてください。知識の定着にテストを用いる「テストエデュケーション」で学習でき、知識習得に高い効果があります。
教育担当者様の声を反映し、誰でも簡単に直感で操作することが可能なシステムを作りました。研修を実施する側・受講者側、いずれも効率的に利用できます。
また、多彩なeラーニングコンテンツがセットになった「サクテス学びホーダイ」を活用いただければ、さまざまな対象にあわせた社内教育がすぐに実施できます。
「SAKU-SAKU Testing」にコンテンツがセットされているため、素早くWeb教育をスタートすることができます。
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