人事DXで勝ち残る会社を作る!目的・課題・システム活用例まとめ
企業における「DX」(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が高まっています。経済産業省の「DXレポート」では、日本企業がDXを推進しなかった場合12兆円の経済損失が生じる「2025年の崖」が懸念されています。あらゆる分野でのDXの推進が急務となっており、人事の分野でも「人事DX」の導入と推進が求められます。
この記事では、人事DXの目的や課題、システムの活用例についてまとめます。人事のご担当者様はぜひ参考にしてみてください。
目次[非表示]
- 1.人事DXとは
- 1.1.そもそもDXとは
- 1.2.HRテックとDX
- 1.3.ピープルアナリティクスとDX
- 2.なぜDXなのか?
- 2.1.競争力・事業の優位性
- 2.2.変化に強い組織作り
- 2.3.レガシーシステムからの脱却
- 3.人事DXの課題と解決策
- 4.人事DXシステム活用の実例
- 4.1.給与計算システム・勤怠管理システム
- 4.2.人事管理システム・タレントマネジメント
- 4.3.評価システム
- 4.4.BPOによる業務の効率化
- 4.5.eラーニングによる人材育成
- 5.人事管理を人材育成につなげるならイー・コミュニケーションズにご相談を
人事DXとは
「人事DX」とは、デジタル技術を活用して、人材の情報などを集約して採用・育成・配置を行い、パフォーマンス向上や企業文化を変革することをいいます。人事とDXのかかわりは大きく2つに分かれます。
まず、人事業務自体のDX化です。冒頭で述べた「人事DX」に当たります。デジタル技術による社員の情報管理は適材適所の配置などにも役立ち、会社全体にも高い効果が期待できます。
もう1つは、全社的なDXを推進するための人材を確保・育成することです。こちらはDX人材の「戦略人事」の実現と言い換えることができます。
深く理解できるよう、以下により詳細にまとめます。
そもそもDXとは
「人事DX」の「DX」とは、デジタル技術を活用し、商品はもちろん組織全体を変革して競争上の優位性を確保することをいいます。「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略語です。
単なる業務のデジタル化でなく、デジタル技術によってビジネスモデルを改革すること・競争力を高めることを指します。「Transformation」は、「変化」「変容」などと訳される英語です。よい方向に変化させる・改革するという面がなければDXと言えません。
なお、なぜ「Transformation」の「T」を取って「DT」と略さなかったのかには、2つ理由があります。DTと略すとプログラミング用語にある別の「DT」と紛らわしくなること、英語では「トランス」を「X」と略す習慣があることです。この2つの理由により「DX」と略されるようになりました。
HRテックとDX
「人事DX」と深い関連のある概念に、「HRテック」があります。「HRテック」は、テクノロジーによって人事業務を効率化・課題解決するサービスや技術のことです。「人事」の意を表す英語「HR(Human Resource)」と「テクノロジー(Technology)」を組み合わせた造語です。
DXとHRテックは似ていますが、違う内容を表します。HRテックは人事のデジタル化・最適化のことですが、DXはそれを一歩進めてビジネスモデルや企業風土の改革まで含む概念です。
ピープルアナリティクスとDX
また「ピープルアナリティクス」という概念もあります。ピープルアナリティクスは、社員の情報やデータを収集・分析して人事業務に活用することをいいます。
具体的な内容としては、以下のようなことが挙げられます。
活躍している社員の共通点を見つけて採用に活かす
データに基づき客観的な人事評価を行う
退職者に共通する傾向を抽出して対策を打つ
ピープルアナリティクスにより、主観や経験など属人的な要素を排除して精度の高い人事マネジメントを行うことが可能になります。Google社も活用するなど、人事DXに活用できる手法として注目されています。
なぜDXなのか?
次に企業がDXに取り組む目的・理由についてまとめます。なぜ企業には人事をはじめいろいろな部署でDXの導入が求められるのでしょうか?具体的には以下の点が挙げられます。
- 競争力・事業の優位性
- 変化に強い組織作り
- レガシーシステムからの脱却
1つずつ見ていきましょう。
競争力・事業の優位性
まず初めに、自社の競争力・事業の優位性を高めることが挙げられます。すでにDXの定義で述べたように、DXは企業の競争力や優位性を保つために活用される有効な手法です。
経済産業省の「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」(DX推進ガイドライン)によるDXの定義にも、「(前略)デジタル技術を活用して、(中略)競争上の優位性を確立すること」とあります。DXの導入によって、優位性の確立を目指すことができます。
DXにかかわる人事の施策では、人事業務のDX化に加えて、DXによる戦略人事の実現やDX人材の確保・育成により競争力を向上させることも求められます。先述した通りです。
変化に強い組織作り
DXにより、変化に強い組織作りが可能となります。組織作りへの活用も導入すべき理由の1つです。
DXを活用することで市場の変化や働き方の変化・多様化などに対応しやすくなります。たとえばビッグデータを活用した商品開発、新しいビジネスモデルの発明、リモートワークなどが考えられます。さらにDXによるクラウド化などは、災害やトラブル発生時の対応力を高め、事業継続性の向上につながります。
人事においては、とくに働き方の変化への対応や、変化をチャンスとできる人材育成などが求められます。
レガシーシステムからの脱却
「レガシーシステム」からの脱却もDXを導入する目的の1つです。レガシーシステムとは、古くなった技術によるシステムのことです。
開発者が退職したりしてブラックボックス化してしまったシステムは、変更するとどのような影響があるかわからずトラブルのリスクがあります。あるいはシステムがパッチワークのように変更され、管理者しか全体像がわからないケースもあります。レガシーシステムを使用することそのものが、危険をはらむことなのです。
そのほかレガシーシステムを使い続けることには、維持管理費がかさむなどのデメリットがあります。公式サポートの終了しており、個別で高額な保守管理を依頼しなければならなかったりするからです。そのほかセキュリティ上のリスクもあります。
DXによりレガシーシステムを使用する不確実な状況から脱却することができます。ただし移行には、元のシステムの解析など専門知識が必要です。
人事DXの課題と解決策
人事DXを行う際に課題・問題点となる点と、その解決策についてまとめます。具体的には次の3点です。
- IT人材の不足
- 手段の目的化
- データの点在
1つずつ見ていきましょう。
IT人材の不足
まず、IT人材が不足しているという問題があります。DXに取り組むほとんどの企業で、この問題に直面しています。
自社でDXを推進する場合、担当者はデジタル技術の知識と自社のビジネスに対する理解との両方が必要です。多くの企業で、この2つの条件を満たすDX推進を行うことができる人材が足りていません。
必要スキルや予定のポジションを明確化して、採用あるいは育成することで解決を図りましょう。以下の手段が考えられます。
デジタルスキルのある人を採用して、自社ビジネスを理解してもらう
ある程度デジタル技術を理解できる既存社員に、専門的なスキルを身に付けてもらう
どちらか、あるいは両方によって人材不足を解決しましょう。
なお参考までに、推進チームの役割分担は次が一般的です。
プロデューサー(リーダー格)
ビジネスデザイナー(DXの企画・立案・推進)
アーキテクト(システムの設計)
データサイエンティスト/AIエンジニア(デジタル技術やデータ解析)
UXデザイナー(システムのユーザー向けデザイン)
エンジニア/プログラマ(実装・構築)
役割をイメージしながら採用・育成を行いましょう。
手段の目的化
次に、手段が目的化してしまっている場合です。HRテック導入がゴールになってしまっているケースです。
DXはデジタル技術による優位性の確立やビジネスの変革であり、HRテック導入はDXを実現するための手段です。HRテックの導入が目的になってしまうと、システムやツールがあるのに意思決定などに活用できていないままになってしまいます。
この状態を防ぐためには、HRテック導入前に課題を洗い出し、どんな課題を解決したいのか目的を明確化・共有します。そのうえでHRテックを導入しましょう。また運用し続けられるように仕組み化・ルール化することも有効です。
データの点在
複数の部署に情報やデータが点在している場合も、DX化の障害となります。点在の状態は、さまざまなケースが考えられます。
まず、紙ベースで記録されていたりデジタルデータで保存されていたりするなど、記録の形式が統一されていない場合があります。また、同じファイル名でも内容にズレのある複数のコピーがある場合もあります。一括管理されていないと起こってしまう状況です。
手間はかかりますが、まず一括管理できる状態にする必要があります。優先順位の高いデータから収集して、一元化していきましょう。またいったん一元化できたら、それ以降は点在・混在しないよう運用することが必要です。入力や更新・管理など、運用面のルールも共有のうえ仕組み化しましょう。
人事DXシステム活用の実例
人事DXシステムの例と活用についてまとめます。人事DXシステムは、定型業務の自動化・省力化のツールと、意志決定に役立つツールとに大きく分かれます。一気に導入するのではなく、段階的に導入しましょう。まずは効果を出しやすい課題を選んで、その課題を解決できるシステムから導入するのがおすすめです。
具体的には次のようなシステムや活用方法があります。
給与計算システム・勤怠管理システム
人事管理システム・タレントマネジメント
評価システム
BPOによる業務の効率化
eラーニングによる人材育成
1つずつ見ていきましょう。
給与計算システム・勤怠管理システム
まず、労務管理の給与計算や勤怠管理のシステムがあります。
労務管理・勤怠管理は、ミスの許されない業務ながら価値を生まない業務でもあります。自動化することができれば、ほかのコア業務に時間を割くことができるようになって生産性も高まります。
システムを導入すると、時間や労力をかけずに正確に処理することができるようになります。定型業務なので自動化しやすく、システム導入も容易というメリットもあります。
人事管理システム・タレントマネジメント
次に、人事管理システムやタレントマネジメントシステムが挙げられます。
社員のスキルや資格、経験などを管理することができるシステムです。異動のシミュレーションが可能で、人的配置の最適化に役立ちます。社内の保有・不足スキルが可視化され、人材開発の方針策定にも役立ちます。
これらにより「戦略人事」の実践が可能となり、人事部内の効率化だけでなく会社全体の生産性や業績アップにもつながります。
評価システム
社員評価をサポートするためのシステムもあります。
全社員の目標設定から評価までに使用することが可能です。紙やスプレッドシートでやり取りするよりも、評価の作業を効率化することができます。
また評価システムを使うと、評価基準の明確化や評価結果を集計して適正に評価することなどが可能です。上司による属人的な評価は、社員が客観性に疑問を感じたり不満を持ったりするケースが多くあります。システムを活用した客観的な評価は、社員のモチベーションにもプラスとなります。
BPOによる業務の効率化
「BPO」(専門業者への外部委託)とDXを並行して実施することも課題解決に効果的です。
ここまでに述べてきたシステムによる自動化は、まとめて「RPA」(「Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)」の略語)と呼ばれます。RPAだけでなく、BPOも併用することで高い効果が期待できます。
正確にはBPOはDXに含まれません。しかし生産性が低く自動化したい業務の中にも、人間が対応すべきことが含まれる場合があります。そのため、BPO活用がDX成功のカギとなるケースが多くあります。
人事でのDX成功例では、労災申請などのフロント業務にBPOを活用した例があります。
eラーニングによる人材育成
育成・教育面のDX推進としては、必要なスキルの取得にeラーニングを活用することが挙げられます。eラーニングはスマートフォンやPCを使って、動画やスライド形式の教材で学ぶ方法です。
eラーニングであれば、座学式の講義と違って社員も自分のタイミングで学習することができます。業務に負担のかからない形で効率的な学習が可能となります。受講状況やテスト結果の管理ができるサービスもあり、学習者だけでなく管理者側の効率化も可能です。
自社でコンテンツを作成することができるほか、コンテンツがサービス側で用意されているケースもあります。人材開発・スキルの習得に役立てることができます。
人事管理を人材育成につなげるならイー・コミュニケーションズにご相談を
eラーニングは、能力向上に役立つ知識系の効率的な学習に最適です。しかも人事の重要な業務の1つ、育成をDX化することが可能になります。
弊社のeラーニングプラットフォーム「SAKU-SAKU Testing」では、能力向上に利用できるコンテンツ「ビジネスベーシック」をご用意しています。
「ビジネスベーシック」では、入社1年目~3年目までの社会人としての基本を学べる12コースを全45本の動画でご用意しています。
5~15分の動画と確認問題によって、スキマ時間で効率的に知識を定着させることができます。
管理用画面から受講状況やテスト結果が簡単に確認でき、どの階層の方の受講も簡単に管理ができます。
それぞれのカテゴリー受講後に行う総復習テストでは、結果をレーダーチャートで表示し、スキルを可視化することが可能です。
人事管理を人材育成につなげる際にぜひ「ビジネスベーシック」をご活用ください。