「カッツモデル」とは?知っておきたい構成スキルと人材育成への活用方法を解説
「カッツモデル」とは、組織の人材育成において重要なフレームワークです。
本記事では次世代のリーダー育成に取り組む小・中規模企業の人事・教育担当者の方に向け、カッツモデルの基本概念から具体的な活用方法までを解説します。
組織内で効果的な人材育成を行いたい方は、ぜひご覧ください。
目次[非表示]
- 1.カッツモデルとは?
- 2.構成する3つの階層
- 3.構成する3つのスキル
- 3.1.① コンセプチュアルスキル(概念化能力)
- 3.2.② ヒューマンスキル(対人関係能力)
- 3.3.③ テクニカルスキル(業務遂行能力)
- 4.カッツモデルを活用するメリット
- 5.カッツモデルを活用するためのポイント
- 5.1.階層ごとに求める能力をリストアップする
- 5.2.役職に応じた研修を実施
- 5.3.スキル別に研修を実施
- 6.まとめ
カッツモデルとは?
カッツモデルは、効果的なリーダーシップに必要なスキルを分類した理論で、1955年に社会心理学者ロバート・L・カッツによって提唱されました。
このモデルでは、リーダーに求められるスキルを
・概念的スキル
・人間関係スキル
・技術的スキル
の3つに大別しています。カッツはこれらのスキルがバランスよく、適切に活用されることが「組織の成功を導く鍵である」としています。
本スキルセットはリーダーシップ開発や人材育成、組織運営の分野で広く参照され続けており、「普遍的」なリーダーシップの基礎として現代にも活用されています。
構成する3つの階層
カッツモデルは、下記3つの階層に分かれます。階層ごとに詳しく解説していきましょう。
① 経営者・幹部クラスの「トップマネジメント」
トップマネジメントは経営者や幹部クラスを指し、会長、社長、副社長、CEO(最高経営責任者)、COO(最高執行責任者)など経営者層を含みます。
彼らは組織全体の戦略的方向性を定め、目標を明確化し戦略を策定する重要な役割を担っています。企業全体の業績に対する責任をもち、経営方針や戦略の決定に深く関与しますが、日常の現場指示を直接行うことは少ない立場です。
② 中間管理職クラスの「ミドルマネジメント」
ミドルマネジメントは組織内での調整役を担い、部長、課長、工場長、支店長などの管理職がこの階層に含まれます。彼らはトップマネジメントからの経営方針や戦略を理解し、部下へ伝達し、業務が円滑に進むよう監視・調整します。この役割は部下と密接に連携し、プロジェクトの進行を確認しながら必要に応じて細かな調整を行うため、組織の目標達成に不可欠です。
③ 主任・リーダークラスの「ロワーマネジメント」
ロワーマネジメントは、組織内のメンバーに直接指導を行い、具体的なタスクの実行を監督します。この階層には係長、主任、チーフなどの役職や、リーダーとしてメンバーをまとめる一般社員も含まれます。ミドルマネジメント層から指示された内容や業務を確実に実行する能力が求められ、組織の目標達成に直結する現場の業務を支え、チームを具体的な成果に導く重要な役割を担います。
構成する3つのスキル
カッツモデルは、下記3つのスキルで構成されています。スキルごとに詳しく解説していきましょう。
① コンセプチュアルスキル(概念化能力)
コンセプチュアルスキルは、複雑な事象を戦略的視点で捉え、本質を理解し分析する力です。特に組織の戦略的な決定や変革の推進、新たなビジネスモデルの構築などにおいてのスキル活用が求められます。
<コンセプチュアルスキルの例>
・論理的思考(ロジカルシンキング)
複雑な事象を原因と結果で分析し、論理的に判断し整理する思考法。
・問題解決力
問題の根本原因を見極め、解決策を導く能力。
・批判的思考(クリティカルシンキング)
物事を疑い、客観的に見直し、本質を見極めて改善やリスク回避を目指す思考法。
・水平思考(ラテラルシンキング)
常識に囚われず、自由にアイデアを生み出す、水平方向の発想拡張思考法。
・多面的視野
複数のアプローチで課題解決を導く能力。異なる角度からの打開策を見出せる。
特に、経営者・幹部クラスの「トップマネジメント」に求められる能力です。
② ヒューマンスキル(対人関係能力)
ヒューマンスキルは、他人と効果的にコミュニケーションを取り、協力して仕事を進める能力です。共感や理解を基にチームワークを築き、組織内でのリーダーシップやチームマネジメントにおいて重要な役割を果たすスキルです。この能力は職場での関係構築や維持、チームの生産性向上に直結します。
<ヒューマンスキルの例>
・コミュニケーション能力
他者との情報共有や意見交換を効果的に行う能力。
・プレゼンテーションスキル
アイデアや情報を伝え、合意を得る能力。構成力、表現力、説得力がキーです。
・エンパワーメント
部下やチームを支援し自己成長を促す能力。
・コーチングスキル
部下の成長を促すフィードバック能力。
・動機付け(働きかけ力)
目標達成への意欲を引き出し持続させる能力。
経営者・幹部クラスの「トップマネジメント」、中間管理職クラスの「ミドルマネジメント」、主任・リーダークラスの「ロワーマネジメント」すべてに求められるスキルです。
③ テクニカルスキル(業務遂行能力)
テクニカルスキルは、特定の分野や業務で必要な専門的な能力や知識を指します。業界や職種によって異なり、顧客対応や問題解決、パソコン操作、プレゼンテーションなどが含まれます。
営業なら市場知識や商品知識が、事務ならパソコン操作が必要です。これらのスキルは訓練や経験を通じて磨かれ、業務遂行に不可欠です。
<テクニカルスキルの例>
・プログラミングスキル
コンピューターや特定のソフトウェアを操作する能力。
・データ分析と統計
情報を収集し、パターンや傾向を抽出するスキル。
・金融分析
財務データを解釈し、投資や経営戦略に役立てる能力。
・語学スキル
異なる言語を理解し、コミュニケーションを円滑に行う能力。
・設計と製造
製品やシステムの設計から製造までのプロセスを管理するスキル。
特に主任・リーダークラスの「ロワーマネジメント」に重視されるスキルです。
これまで解説してきた「3つの階層」と「3つのスキル」を図にしたものが下記になります。
カッツモデルを活用するメリット
ここからは、カッツモデルを活用する3つのメリットを解説していきます。
メリット① 従業員に必要な能力が明確になる
カッツモデルを活用するメリットの一つは、従業員にとって自己啓発を促す効果が期待できることです。各階層に必要な能力を明確に整理し、ポスターや冊子などで周知することで、従業員は自身に必要なスキルを把握しやすくなります。
特に新入社員向けには具体的なテクニカルスキルやヒューマンスキルをまとめることで、自己成長に直結する情報を簡潔に提供できます。こうしたアプローチにより従業員は不足している能力、将来必要な能力を把握し、自己成長に積極的に取り組むことができます。
メリット② 管理者が評価や育成に使用できる
カッツモデルは管理者や人事などの評価者が社員の評価や人材育成に活用できる有益なツールです。各階層に求められる能力が明確に定義されているため、業務の目標達成度や改善力、協調性などの評価項目を設定するのに役立ちます。
部下や従業員の現在の能力レベルや成長度合いを客観的に測ることができ、育成計画の策定や教育プログラムの設計にも役立つほか、各階層の育成テーマを考える際の指標としても活用できます
メリット③ 企業は必要な人材を採用できる
カッツモデルは経営戦略を遂行するために必要な人材の能力を整理し、採用プロセスでのミスマッチを防ぐ手助けをします。
具体的なスキルやレベルを明確に把握することで、スキルマップの作成や社員へのスキル周知にも役立ち、抽象的な「優秀な人」の概念を具体化し、組織の成功に向けた戦略的な人材管理をサポートします。
カッツモデルを活用するためのポイント
最後に、カッツモデルを活用するための3つのポイントをお伝えします。
階層ごとに求める能力をリストアップする
各階層で求められるスキルと評価項目を明確にしておきましょう。各階層に必要な能力をリストアップし「当社が定義するコンセプチュアルスキルは〇〇、〇〇、〇〇です」など具体的に提示します。
その後、実務面や思考判断能力面などに分類し、現状の能力を強化するか、新たにスキルを身につけるかを詳細に検討することで各階層において重点的に教育すべきスキルが明確化され、より納得のいく評価が可能になります。
役職に応じた研修を実施
各階層のスキル強化のためには、その階層に応じた研修を実施することが大切です。
例えばトップマネジメント層では経営力や戦略構想に焦点を合わせた研修が重要で、外部の専門家との議論や研修が効果的です。ミドルマネジメント層にはリーダーシップやハラスメント防止の研修、ロワーマネジメント層には業務推進や顧客対応に関する研修が適しています。
スキル別に研修を実施
カッツモデルを活用すれば、スキルごとに研修を行うことも可能です。
・コンセプチュアルスキルの習得に適した研修:
集合型研修が最適です。抽象的な思考法や心構えを理解するためには、落ち着いた環境での学習が適切であり、グループワークなどを通じて能力の理解を深めることができます。
・ヒューマンスキルの習得に適した研修:
集合研修とOJTの組み合わせが有効です。集合研修ではロールプレイングを交えて実践的な能力を養うことができ、OJTではハイレベルな社員をトレーナーとして活用し、現場での実体験を通じてスキルを磨くことができます。
・テクニカルスキルの習得に適した研修:
テクニカルスキルを身につけるためには、OJTが効果的です。実務経験によって必要な知識や技術を獲得できます。商品やサービスに関する専門知識を学ぶために、OJTを活用していきましょう
まとめ
「カッツモデル」について解説してきましたが、いかがだったでしょうか。
カッツモデルのスキルセットは時間が経ってもその価値を失わず、「普遍的」なモデルとして様々な領域で活用されています。
こうしたモデルを人材育成や研修の領域でも適切に活用し、全体的な組織の成長へと繋げていきましょう。
また、人材育成や研修の実施方法に関してお悩みの教育担当者の方には、イー・コミュニケーションズの「サクテス学びホーダイ」がおすすめです。100本を超える動画と、理解度を測定することができるビジネス問題が3,000問以上登録されています。
内定者教育向けのコンテンツや入社3年目までのビジネススキルをアップさせるコンテンツ、管理職や管理職候補向けのマネジメントスキルを育成するコンテンツなどが揃っています。
すぐに社内のWeb教育をスタートすることができるパッケージとなっています。
ご興味がおありの場合は、ぜひお問い合わせください。