【学校vs学生|オンライン試験の導入が進まない原因を調査】
調査全容を公開!AATP、学内試験に関する実態調査を実施
(1)学内試験に携わっている高等学校・大学の教職員103名対象「オンライン試験導入に関する意識調査」
(2)学内試験を10回以上受けたことのある大学生117名対象「大学生の学内試験に関する実態調査」
オンライン試験ならびにコンピューターを使用したCBT(Computer Based Testing)方式の試験は世界的には普及が進んでいますが、日本では遅れています。特に学校の試験では導入が進んでおらず、例えば、OECD生徒の学習到達度調査(PISA)は2015年から全面的にCBTで実施されていますが、日本の全国学力調査は、2027年度以降でようやくCBTでの実施が行われる予定ということが発表されたばかりです。
Asia ATP Japan SIG※1※2 では、企業に比べてオンライン試験導入が進まない教育現場に注目し、オンライン試験の導入が進んでいない原因を明らかにすべく、学内試験を実施する側である高等学校・大学の教職員の意識調査を行うとともに、学内試験を受験する学生側の実態調査を行いました。その結果、不正が増えることの懸念や学校全体でのシステム化の整備がされていないことなどを理由に学校側では積極的に検討を進めていないのに対し、学生側はオンライン試験の利便性の高さなどにメリットを感じオンライン試験の実施を希望する傾向があり、学校側と学生側の意識にギャップがあることが判明しました。
※1※2
ATPとは
ATP (Association of Test Publishers)は、1992年に設立され、米国を中心に全世界で活動をしているテスト業界の非営利団体です。あらゆる形式や用途におけるテストの社会的価値を促進し、維持し、公共の福祉に寄与することをミッションとしています。
Asia ATPとは
Asia ATPは、全世界で4つあるRegional Divisionの一つ(他はヨーロッパ、インド、中東&アフリカ)。Asia ATPはアジア全域をカバーしていますが、現在では中国、韓国、日本が中心となってそれぞれの国に Special Interest Groupを設けて活動を行っています。 Asia ATP Japan SIGは、年1回のカンファレンス開催、分科会等の活動を通して、日本の試験業界発展のために貢献します。
≪利用条件≫
1 情報の出典元として「Asia ATP」の名前を明記してください。
2 ウェブサイトで使用する場合は、出典元として、下記リンクを設置してください。
● 調査名称:オンライン試験導入に関する意識調査
● 調査方法:IDEATECHが提供するリサーチPR「リサピー®︎」の企画によるインターネット調査
● 調査期間:2024年7月1日〜同年7月2日
● 有効回答:学内試験に携わっている高等学校・大学の教職員103名
※構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100とはなりません。
Q1で「導入していない」と回答した方に、「Q2.学内試験においてオンライン試験の導入を検討していますか。」(n=81)と質問したところ、「全く検討していない」が64.2%、「あまり検討していない」が19.8%という回答となりました。
Q2で「非常に検討している」「やや検討している」と回答した方に、「Q3.学内試験においてオンライン試験の導入を検討したきっかけを教えてください。(複数回答)」(n=5)と質問したところ、「試験実施に要する業務が負担となったから」が60.0%、「学校内のペーパーレス化が進んだから」が60.0%という回答となりました。
<自由回答・一部抜粋>
● 35歳:世の中がペーパーレスの時代になってきているから。
● 60歳:新型コロナ感染症の蔓延。
● 61歳:コロナ対策で遠隔授業が導入されてから、試験もオンラインが導入された。
Q1で「導入していない」と回答した方に、「Q5.もしオンライン試験を導入するとしたら、不安を感じますか。」(n=81)と質問したところ、「非常に感じる」が39.6%、「やや感じる」が33.3%という回答となりました。
<自由回答・一部抜粋>
● 62歳:職員のリテラシーにばらつきがある。
● 47歳:オンライン試験は不正がおこなわれそう。
● 49歳:ペーパー試験に特に問題や不具合を感じていないから。
● 43歳:学校は作り自体がアナログなので全国一斉に変えないと難しい。
● 59歳:現時点での必要性と費用対効果。
● 60歳:数学は、手を動かして解くことが必要。
● 55歳:まだ一人一台の端末が整備されていない。不正抑止の方法がよくわからない。ネットワークが弱く、不具合が出ることがある。トラブル発生時に対応できる人員が限られている。(一部の人間に負担が集中する)
Q1で「何度もある」「数回程度ある」と回答した方に、「Q4.オンライン試験のメリットと感じるものを教えてください。(複数回答)」(n=77)と質問したところ、「移動の手間がかからないこと」が67.5%という回答となりました。
Q4で「わからない/答えられない」「特にない」以外を回答した方に、「Q5.Q4で回答した以外に、オンライン試験のメリットがあれば、自由に教えてください。(自由回答)」(n=72)と質問したところ、「天気に左右されない」や「気軽に受けられる」など37の回答を得ることができました。
<自由回答・一部抜粋>
● 22歳:気軽に受けれる。
● 21歳:基本どこでも受けられる。
● 21歳:プレッシャーで体に負担がかからない。
● 22歳:参照可能な場合が多い。
● 19歳:天気に左右されない。(電車の遅延を気にしなくていい。)
「Q6.すべての学内試験がオンライン試験となった場合に、不安に感じる点を教えてください。(複数回答)」(n=117)と質問したところ、「カンニングが増えそう」が54.7%という回答となりました。
Q6で「特にない」「わからない/答えられない」以外を回答した方に、「Q7.Q6で回答した以外に、オンライン試験に対する不安があれば、自由に教えてください。(自由回答)」(n=108)と質問したところ、「インターネット回線に不安がある」など56の回答を得ることができました。
<自由回答・一部抜粋>
● 19歳:エラーなどが発生した時に未受験になる可能性がある。
● 21歳:ちゃんと提出できているのか。
● 19歳:インターネット回線に不安がある。
● 19歳:カンニングをする人が増えそう。
● 21歳:1日に何科目も試験を受けると目が疲れそう。
● 22歳:成績基準の不透明化。
「Q8.ペーパー試験のメリットと感じるものを教えてください。(複数回答)」(n=117)と質問したところ、「監視が行き届く」が59.8%という回答となりました。
「Q9.今後、オンライン試験とペーパー試験のどちらで学内試験を受けたいと思いますか。」(n=117)と質問したところ、「オンライン試験」が17.1%、「どちらかといえばオンライン試験」が27.4%という回答となりました。
この調査は、学内試験を10回以上受けたことのある大学生117名を対象に、大学生の学内試験に関する実態調査(受講者側)を実施しました。
まず、約8割の学生が学内試験を「オンラインで受験したことがある」と回答し、オンライン試験の方法については、「自宅受験(監視無し)」(76.6%)が最も多く、「教室内でのオンライン試験」(37.7%)と続きました。オンライン試験中に参照したものとしては、「教科書」(59.7%)や「ノート」(51.9%)が挙げられ、オンライン試験のメリットとしては、「移動の手間がかからないこと」(67.5%)が最多の回答となっています。一方で、オンライン試験の不安な点としては、「カンニングが増えそう」(54.7%)や「PCのトラブルによって上手く受験できなくなりそう」(43.6%)が挙げられました。反対に、ペーパー試験のメリットとしては、「監視が行き届く」(59.8%)や「試験の公平性が高い」(54.7%)が挙げられ、今後の試験方法としては、44.5%がオンライン試験を希望しています。
学生側の調査では、オンライン試験を利用した経験に基づき、オンライン試験の利便性が高く評価され、オンライン試験を希望している学生が多い実態が明らかになりました。一方で、不正行為やPCトラブルなどの不安を感じている学生も多いことから、オンライン試験を厳正・厳格に安定して行えるシステムを取り入れることも必要であると考えられます。
今回、学校側と学生側の2つの調査を通して、不正が増えることの不安や学校全体でのシステム化の整備がされていないことなどを理由として、積極的に検討を進めていない学校側の状況と、オンライン試験の利便性の高さなどをメリットと感じオンライン試験の実施を希望する学生側の意識にギャップがあることが判明しました。学校側の調査では、導入に至らない主な理由は、「学校内でシステムが完備されていないから」が61.7%と最も高くなっていること、ならびに、積極的に導入を検討している学校が0%となっていたことから、オンライン試験を一般的な「システム化」の文脈でのみとらえている傾向があり、オンライン試験を導入することの意義やメリットをあまり感じられていないと考えられます。
昨年、Asia ATP Japan SIGの一員である株式会社イー・コミュニケーションズが企業の試験担当者向けに行った「社内試験の運用に関する実態調査」https://www.e-coms.co.jp/news/news231003 では、「社内試験のCBT化を取り入れてみたい」の回答が8割以上であったことと比較すると、教育現場でのオンライン試験の導入意欲の低さは非常に対象的です。
企業ではコスト削減の意識が非常に高いことからCBT化が検討されているという状況がこの調査結果から伺えますが、それ以外の点にも多くのメリットを感じてCBT化の検討をしていることがわかりました。今回調査の対象として学校において導入意欲が低い理由は、これらの多様なメリットがあることの理解が企業に比べると進んでいないことが考えられます。今後、学校においてオンライン試験の導入検討を促進するには、これらのメリットの理解を促進し、オンライン試験を導入することの意義を感じるように啓発する必要があると考えられます。
また一方で、不正行為や公平性に関する不安が学校側、学生側の双方にあることが分かりました。この背景としてはオンライン試験で信頼性と公平性を確保するための技術的・運用的な手段についての理解が進んでいない可能性が考えられます。今後、オンライン試験の導入を促進するには、オンライン試験が厳正かつ公平な試験方法であるという意識の定着化のための理論的な裏付けと、実際の試験現場で紙試験と同様の緊張感を維持して試験を実施する運用方法について、周知を促進していく必要があると考えられます。
Asia ATP Japan SIGは、今回行ったような調査を今後も実施し、日本のテスト業界関係者の方々に有用な情報配信を行って参ります。また、Japan SIGメンバーは今年の11月にタイで開催されるAsia ATPカンファレンスに参加し、アジアをはじめ世界各国のテスト関係者との交流・情報交換を通じて最新のテスト関連情報や事例を収集し、日本の皆様に共有することで、日本のテスト業界発展と日本におけるテストの価値向上に寄与していきたいと考えております。
ATPメンバーの特典
►Globalカンファレンス、地域カンファレンスに会員特典料金で参加可能
►ガイドライン・サーベイの無料ダウンロード
►ATP の活動を通じたNetworkingの機会
►ATP Webサイトメンバーページからの情報収集
►ATPメンバー参加によるBranding 、Member Directoryへの掲載
参加費/加入方法
個人会員(Individual Subscriber)年間 $230 (USドル)団体会員制度もあり
加入方法:ATP Global Webサイトから登録:Join/Renew→Application