コンプライアンス教育 運用のポイント
この記事では、コンプライアンス教育の運用に関するポイントを3つ、ケースを交えながらご紹介します。コンプライアンス教育にぜひ、お役立てください。
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コンプライアンス教育の運用プランニング
運用プランニングにおいては、3つの軸が大切です。
キッカケ(実施背景) |
ゴール |
対象 |
・不祥事があった(ありそう) ・現在値の把握 ・企業体要因(上場等) ・他社動向(業界動向) ・市場動向(ユーザ要求) ・グループ統制 |
・継続的な定着 ・定められた期間での一定水準への到達 ・高い実施率、修了率 ・社内での話題喚起 ・意識向上 |
・新入社員/中途社員 ・一般社員 ・管理職/役員 ・契約社員/アルバイト ・営業職/販売職 ・国内社員/エリア社員 |
例えば、「社内で不祥事があった(キッカケ)」ので、教育を行うようになった場合、ゴールは1ヶ月以内に全員がやることにすべきか、この際、年間にわたっての継続的な教育を行うことにすべきか、対象は、当該部門だけか、管理職層だけか、全社員か、エリアはどうするかなど、この3軸の組み合わせによって教育プランは策定されます。
ケース1
<業種>
ソフトウェア業
<キッカケ(実施背景)>
ノートPCを私物化している社員が何名もいる
<ゴール>
個人情報、情報セキュリティーの社内ルールの徹底とリスク共有を目的に1ヶ月間Eラーニングで20問の満点取得を目指す。
<対象者>
ノートPC貸与者全員
<運用ポイント>
・ゴール達成者にノートPCの再配布を行うことを条件とした。
・Eラーニングはテスト形式で3回までに合格することを条件とした。
・テストはランダム、シャッフルで出題しカンニング防止を図った。
以降、ノートPC配布時の条件としてどうテストを社内ルール化。
ケース2
<業種>
商社
<キッカケ(実施背景)>
新体制での意識再向上
<ゴール>
基本内容と輸入業としての自社事業業務に応じたテーマを選択し、月10問の年間継続的な運用で意識の定着化をEラーニングで実施
<対象者>
国内正社員
<運用ポイント>
・管理職への意識向上を目的に、進捗管理を管理職に委任。
・3ヶ月に1回、管理職からコンプライアンス担当者へ進捗状況を報告。
・トップ自らによる告知を3ヶ月に1回実施。
ケース3
<業種>
製造業
<キッカケ(実施背景)>
社内不祥事
<ゴール>
グループ全社にグループ行動指針および基本テーマをわかりやすく、理解させることを目的に、冊子教材の配布、修了テスト(Eラーニング)の実施
<対象者>
グループ全社員
<運用ポイント>
・多様な事業体の社員が親近感を覚えられるように教材を工夫。
・トップメッセージの伝達。
・学習の仕方、修了条件等、簡易マニュアルの伝達、配布。
教育手法を検討する
教育手法を適切に選択するとさらに成功に近づけます。
教育手法は、集合研修、Eラーニング、ビデオ学習、冊子教材配布、OJT、まで現在多様な手段があります。それぞれのメリット、デメリットを理解し、適切な選択を行う事が効果に影響を与えます。
集合研修
<メリット>
・受講者同士のコミュニケーション、ディスカッションを通し、相互理解、共通理解形成を行う事ができる
・講師と受講者のインタラクティブ(一方通行ではない相互性)な関係を通し、受動的ではない能動的な学習を行う事ができる
・リアルコミュニケーションで、意義、狙い、ゴール設定の伝達、意識醸成、マインド醸成が比較的容易
・知識だけでなく、行動できるかどうかまで確認できる
<デメリット>
・意欲の低い受講者がいると全体に影響する
・講師、ファシリテーターの力量によって理解度、活性度が異なる
・知識を網羅的に学ばせる為には時間を要する。(テーマが限定される)
・集合する為の移動コスト、時間コストがかかる
・対象人数が常に限られる
・一過性になりやすい
・効果測定が難しい
eラーニング
<メリット>
・好きな時間にいつでも実施できる(隙間時間に実施できる)
・運用次第で大人数でも限られた期間で一斉同時に学習できる
・難易度、テーマなどを受講者によって変える事ができる
・集合研修よりもコストパフォーマンスが高い
・網羅的な学習が効率良くできる
・継続的、繰り返し学習が容易
・効果測定が容易
<デメリット>
・強制力が弱い為、いつまでもやらない人が必ずいる
・知識学習が中心となり、実践できるか確認できない
・カンニングやなりすましなどが発生しやすい
・システムの運用という業務が発生する
・意義や狙いなどが一方通行の為、質問、疑問などが受講者から出やすい
・教材を工夫しないと受講者はモチベートされにくい
ビデオ学習
<メリット>
・ドラマ仕立てなどのストーリー展開が理解形成を促進できる
・受講対象者が誰でも同様の学習効果を期待できる
・講師に依存しないで、共通の教育効果が期待できる
・市販教材なら制作コストが不要
・eラーニングに搭載すれば、モバイルでもいつでも視聴できる
<デメリット>
・網羅的に学習すると時間がかかる
・自主制作の場合は映像制作に時間と費用がかかる
・業務時間中にビデオ視聴しづらい
・会義室で視聴する場合は、集合研修と同様に移動コスト、時間コストがかかる
冊子教材
<メリット>
・手元でいつでも確認できる
・ITリテラシー、契約形態に関係せずに全員を対象にしやすい
・汎用的な市販教材を低価格で活用できる
・自社オリジナルのものも制作する事ができる
・イラストや漫画などで誰にでもわかりやすく、とっつきやすい教材開発ができる
<デメリット>
・制作のコスト、時間がかかる
・タイムリーなテーマは教材化しにくい
・どの程度読んだのか、理解したかを把握できない
・やる気のない社員は全く読まない
OJT
<メリット>
・業務シーンで必要な時に必要な情報伝達が可能
・先輩、上司などから相手に合わせてFACEtoFACEで直接的に教育ができる
・具体的、かつ即時的な教育ができる
<デメリット>
・マネジメントする人によって教育力が異なり偏りが出る
・マネジメントする人との相性の問題もある
・実施状況を全体で把握しづらい
・マネジメント層への動機づけが難しい
eラーニング運用のポイント整理
教材開発は自社業務に適したリアリティーがポイント
業務シーンとかけ離れている → リアリティがない → つまらない
業務シーンと連動した教材を使用することで、よりわかりやすく、興味を持てるようにすることが大切です。教材開発は3つに分類されます。それぞれメリット、デメリットがあるので、適切な選択が必要です。
① 自社オリジナル教材の作成
<メリット>
自社固有の業務事象にフォーカスできるので学習者の興味意欲が高まる。リアリティのある教材が作成できる。
<デメリット>
制作コストがかかる。教材作成ノウハウが必要。
② 汎用教材の活用
<メリット>
導入がすぐにできる。弁護士などの専門家が監修済みで品質も安心
<デメリット>
業務シーンに適合するとは限らない。一般的で具体性がない。リアリティがない。
③ ①と②を複合した教材の活用
<メリット>
オリジナルは重要なポイントに絞って制作できるのでコストを削減できて早い。リアリティも追求できる。
<デメリット>
作り手が異なるので品質差が生じる。
運用設計で効果に差がつく
キッカケ(背景)、ゴール、対象の3軸で適切な運用設計を行う事がポイント
① 主体選定(誰が主体になる?)
教育もコミュニケーション。誰から誰にやるのか?
1.コンプライアンス教育担当者が主体
2.管理職が進捗管理を担当
3.トップ自らが実施主体になる
② 期間/頻度設計(コツコツか短期集中か?)
1.継続運用(12ヶ月プラン)
・継続は力なり(週1回×4週×12ヶ月)
・毎月1回(月1回×12ヶ月)
・3ヶ月に1回(12ヶ月に4回)
2.時期集中(1ヶ月-2ヶ月間)
・コンプライアンス強化月間(1ヶ月)
・期初/期末
・年度末
③ 教材ボリューム設計(学習時間設計)
あれもこれもだと学習者は苦痛でしかない?
1.必要ミニマム量
2.対象者によって変動
3.1日5分
④ 修了ルール設計
難しすぎてもダメ、優しすぎてもダメ?
1.合格点の設定(80点?100点)
2.回数制限(3回以内の実施のみ)
3.学習進行順序の制御(やらないと次に進めない)
⑤ 実施デバイス
利便性か、セキュリティーか?
1.社内PCのみ(外部アクセス不可)
2.支給モバイル端末可(外部アクセス可)
3.私物端末も可(自宅アクセス可)
管理オペレーション
●従業員情報の登録
社員データベースから対象者の氏名、所属情報などを登録します。人事データは日々変化しますので、どの時点のデータで学習をするかを決める事が重要になります。当然、人事データの収集時期と実施時期は同様になりませんので、学習者が混乱をしないようにガイダンスなどでの情報伝達、学習中に人事異動があった場合の対応フローなどを予め決めておく必要があります。
●ガイダンス
ガイダンスは管理オペレーションの中で最も重要な役割を担います。
目的や意義、狙いの伝達と期間や修了ルールなど学習者が学習を行う前に知りたい情報を整理して伝達します。またこの時、誰からガイダンスを行うかもポイントです。
●ID、PW通知
どのように学習者は学習環境にアクセスするのかを伝達します。ID、PWはユニークなものを配布する事になりますので、一斉送信が配布しつつも、氏名とIDをシステム上で置換できると便利です。
●進捗管理
モニタリングです。エリア、属性別、全体の進行状況など、狙い通りの進捗をしているかどうか、未受講者がどれくらいるか、など期間終了までリアルタイムでモニタリングする事で適切な判断、対応をする事ができます。
●督促
忘れている受講者は必ずいるものです。そのために、タイミングを見計らって、督促メールを送信したり、社内で広報する事で修了率を向上させる事が可能です。
●質問解答
システムに関する質問、疑問、人事異動に際しての質問、疑問、教材の中身についての質問、疑問など個別の質疑、全体質疑などにどのように対処するかは予め決めておく必要があります。丁寧に一つづつ対応していく事は学習者を満足させるかもしれませんが、担当者の業務負荷を必要以上に増加させる事がある為、できる範囲を決める事が重要です。
●レポーティング
実施状況、正答率等を全体、部門、エリア等属性によってクロス集計する事で、実施状況を明確にする事ができます。また、問題別の正誤、ベスト10、ワースト10なども属性によって集計する事で、現在の課題抽出や次の実施テーマに役立てる事ができます。
●フィードバック
学習者はやらされるだけなのか、フィードバックを受けるとしたらどのような情報が欲しいのか、レポーティングの活用方法も予め決定する必要があります。部門別の実施状況など動機づけに役立つものはフィードバックを行う方が効果的です。
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